まず大前提の部分から認めたくない人も多いだろうが、女性参画が進んでいる社会と、進んでいない社会では、前者のほうが経済が強いことが分かっている。例えば、安倍政権時の経産省資料「成長戦略としての女性活躍の推進」(平成26年11月)にも国際比較データとともに、こうしっかりと書かれている。
「国際的には経済社会における女性の参画が進んでいる国ほど、競争力、所得(1人当たりのGDP)が上昇する傾向が見られる」
というわけで、安倍首相は、女性管理職比率を3割にすることなどを目指した成長戦略「ウーマノミクス」を掲げたわけだが大スベリをしてしまう。
今年8月、帝国データバンクが約1万社を対象に調べた女性管理職割合は8.9%。前年比1.1ポイント増で過去最高の増加幅だというが、安倍首相が掲げた目標に遠く及ばない。また、国際労働機関(ILO)が、18年に世界各国の管理職に占める女性の割合を調べた報告書でも日本はせいぜい12%だ。
「12%もいれば十分じゃね?」と思う方も多いだろうが、この数字は世界的にはかなり低い。国際社会で女性に差別的だと指摘されることの多い、イスラム教やヒンドゥー教の国々と同じ水準からだ。
先ほどのILOのデータによれば、世界の女性管理職の比率は平均27.1%。12%というのは主要7カ国(G7)でダントツに最下位だが、アジアグループで見ても最低レベルなのだ。フィリピンは50%、ニュージーランドは40%、日本が目指していた30%に届いているのはシンガポール、タイなどだ。ベトナムも20%代後半、マレーシアも20%、日本の12%というのはインド、バングラディッシュと同じくらい。中東ではカタールよりちょっと低くUAEやモロッコと同じくらいの水準だ。
先ほども紹介したように、経済社会における女性参画を進める、つまりは女性管理職比率を高めていくことは、競争力や所得が上がることにつながる。が、日本は政府がいくら音頭を取っても、女性管理職比率はビタッと低いままだ。
だから当然、競争力も所得も上昇しない。政府がウーマノミクスを叫んでいた14年のOECDの1人当たりGDPは18位だったが、19年には21位に。1人当たりの労働生産性を見ても、14年は21位だが、19年は26位まで落ちている。
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