リテール大革命

キャッシュレス決済が顧客体験向上を生み出す──CRISP宮野代表に聞くサラダ専門店(8/11 ページ)

» 2021年09月24日 07時00分 公開

コロナ禍でも“食”は変わらないが、変化の時間軸が一気に早まった

 20年初頭から続く新型コロナウイルス禍で外食産業は大打撃を受けたが、「コロナで起こらないはずのことが起きたわけではなく、時間軸が早まっただけだと思っています」と宮野氏は語る。

 「外食産業を“お店でご飯を食べる業界”と捉えると確かに打撃を受けましたが、人々の食べる量が減っているわけではありませんから、食領域の市場規模は全く変化していないのです。

 もともと我々はコロナ禍に関係なく、10年後を見据えて事業計画を進めてきました。僕らのビジョンは“レストラン体系を再定義すること”で、あらゆる場所でリアルなつながりを作ることです。

 僕は『スモールグッドシング』と呼ぶのですが、ちょっとした心の交流やちょっとだけ気分がいいというような価値こそが、飲食店が提供する本質的な価値だと思っています。このスモールグッドシングを、お店に来なくても提供したいとも考えており、現在はデリバリー事業を促進しているところです」(宮野氏)

 スモールグッドシングを提供するためには顧客を知る必要があり、そのための足がかりとしてのキャッシュレス決済があった。それに加えて、顧客とのタッチポイントを増やすための取り組みも積極的に進めている。その1つが20年12月にスタートした、オフィス向け配達サービスの「CRISP BASE」だ。

 現在は都内に複数を構えるコワーキングスペース・WeWorkの各拠点や、フリマアプリを提供するメルカリの本社などにバーチャル店舗を設けており、「10時半までに注文すると、自分の好きなサラダが12時前後に、各拠点の冷蔵庫の中に入っている仕組み」(宮野氏)になっている。

 「いわゆるグループオーダーですが、それをテクノロジーで順次アップデートさせています。21年末までに150拠点、22年末までに300拠点が目標です」(宮野氏)

企業向けの「CRISP BASE」に加えて、駅ナカや集合住宅のロビーなどでピックアップできる「CRISP STATION」(後述)も含め、22年末には300拠点を目指す

 現在、CRISP BASEの拠点は80カ所以上になっている。

 「新型コロナウイルスのまん延により、オフィスの稼働率も低いのですが、安定して1日に5個、10個と頼んでくださる企業が少しずつ増えてきました。7月くらいからは、たくさん頼んでくれる企業を増やす取り組みも行っています」(宮野氏)

 配送面を考えると、平日毎日1個の注文より、5個の注文の方が効率もよい。

 「300拠点を都内近辺に作り、各拠点に1回5個を配送することを目指して、仮説と検証を日々続けています。例えば特定の曜日を『CRISP DAY』としてもらうことで、20〜30人程度の会社でも、週に1回必ず10個の注文がある、というようなさまざまな取り組みを行っています」(宮野氏)

 福利厚生や健康経営の一環でCRISP BASEを導入し、従業員が購入した金額の一部を会社が負担するような例もあるという。

 「単なる弁当配達業者ではなく、会社の中に熱狂的なファンを1人ずつ増やしていくような取り組みをしています。今はコロナ禍が少し落ち着いたときに向けて仕込んでいる状況ですね」(宮野氏)

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