二代目の開発にあたって、初代ユーザーのアンケート結果を見返した。「たき火の音のイメージが違った」といった声が多かった。とはいえ、音には好みがある。「パチパチ、パチ」といった音を好む人もいれば、「パチ……パチパチ」といった音を好む人もいる。開発メンバーは「どういう音を出せば、多くの人が喜んでくれるのか」を考えた。
タネ明かしをすると、FireWoodの音はループさせている。一定の間隔で、同じ音を再生させているわけだが、ユーザーからは「パチパチ」のはじける音が耳につくといった声もあった。なぜ、そのように感じるのか。村田さんはその答えを探すために、何度も何度も聞いているうちに、あるとき「パチパチ」音が破裂音のように感じることがあったという。爪あとを残すような音は、聞いている人にとって「また、この音かよ」と感じているのではないか。このような仮説を立て、印象に残りにくい音を収録することに決めた。
再収録が決まったので、次は「場所」を決めなければいけない。たき火の音を収録したことがない村田さんは、「キャンプ場でいいでしょ」と思っていた。しかし、現場に足を運んで、その考えは間違いであることを痛感する。さまざまな音が聞こえてきたのだ。クルマが走行している音、川の水が流れる音、自動販売機からジュースが落ちてくる音など。
このほかにもさまざまな音が聞こえてきたが、音がしない瞬間を狙って録音すればなんとかなるかもしれない。このように考えたが、録音装置を携えた複数の人間が集まって、たき火に向かって何かをしている――。この光景を目にすると、不審者と思われかねない。
再収録したのは、2020年の年末。タイミングが悪く、そのころに山火事がニュースになっていた。大きな炎がたくさんの木に燃え移っていく。そうした映像が何度も流れているなかで、キャンプ場でたき火の音を収録していると、勘違いされるかもしれない。通報されてはいけないので、収録場所を変えた。
知り合いの知り合いに頼んで、私有地で収録させてもらうことに。場所は山梨県である。
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