リテール大革命

空港・カジノ・イベント会場──米アマゾン技術で“無人店舗”が急増中 一方、進出しづらい業界も石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(3/4 ページ)

» 2021年11月02日 07時00分 公開
[石角友愛ITmedia]

 また、米国では購入した商品をレジ袋に詰める作業も店員が行うことが普通ですが、このことも会計待ちの時間を長くする大きな要因でした。そのため、「Just Walk Out Shopping」によって、消費者が商品棚から自分のエコバッグなどに直接商品を入れ、そのまま店舗の外に出ることが可能になれば、この袋詰めの工程が省略され、混雑も解消されると考えられます。

 日本でも、買い物かごを購入すれば、あらためて袋詰めをすることなくそのままのかごで会計・持ち帰りができる“マイバスケット”というものがありますが、店舗の無人化によって、今後そのようなマイバスケット化、マイバッグ化もさらに進みそうです。

(4)カジノ

 ラスベガスにオープンしたてのカジノリゾートであるリゾート・ワールド内に設置されているフレッド・シーガルマーケットというコンビニでも「Just Walk Out」技術が採用されています。

 フレッド・シーガルは米国で有名な高級アパレルセレクトショップですが、カジノ内のアパレルショップに隣接する形で、お菓子や飲み物などを棚から取るだけで手軽に購入できるマーケットを作ったとのことです。

 リゾート・ワールド・ラスベガスのリテール担当ヴァイスプレジデントであるマット・ピナル氏は、店舗のオープンに当たりこのように述べています

 「われわれは、施設全体で最先端の技術を駆使したサービスを提供できるリゾートを目指してきました。フレッド・シーガルのような象徴的なブランドを当社のリテール・ポートフォリオに迎え入れるだけでなく、このような革新的なテクノロジーを活用してお客さまに利便性を提供できるようになったことは、まさしく素晴らしい成果です」

 私は、アパレルショップがこのような取り組みを行うことには大きな意味があると考えています。なぜなら、このような取り組みには、「飲み物を買いに来た顧客をアパレル店舗に誘導する」「先進企業として認知度の向上を図る」といったさまざまな効果が見込まれるためです。

 実際、前述のマット・ピナル氏の発言からも、今回フレッド・シーガルが「Just Walk Out」を採用した背景には、先進的なイメージでのブランド認知を広めたいという狙いがあることが読み取れます。

 また、長い列に並んで水を購入するよりはさっと買いに行ける方が良いため、カジノに来る人々の顧客体験も向上しているでしょう。その点では、企業にとっても顧客にとってもメリットのある取り組みだといえるのではないでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.