ビジネスホテルの“無料朝食”、気になる原価は一体いくら? 激化する“朝食合戦”から見るホテルの今瀧澤信秋「ホテルの深層」(3/4 ページ)

» 2021年11月04日 06時00分 公開
[瀧澤信秋ITmedia]

朝食込みでお得感を演出

 先ほどから“無料朝食”と表現しているが、無料朝食について記事を書くと「無料とはいえ宿泊料金に含まれているだけで厳密には無料ではない」というツッコミをいただく。その通りであるが、有料朝食との対比表現としての無料朝食というワードはホテル側でも打ち出している表現である。一方、有料朝食も、これは有料といえるのか? と感じる時がある。有料朝食は宿泊とセットで朝食付きプランとして売られているケースが多い。

 本来ならば、素泊まりの宿泊料金に朝食の定価を上乗せするからこそ“有料朝食”と表現するものだ。しかし、朝食付きプランを見ると、本来の朝食の定価は厳密に上乗せされておらず、かなり割り引かれているパターンが当たり前だ(時に有料なのにプランとして無料で付いてくることも)。“朝食を付けるとお得ですよ”というアナウンスにも見える。また、チェックイン時に「前日なら朝食券を安く買える」といった案内もよく見かける。

 宿泊客ではなく、朝食だけを食べに来るゲストは当然定価を支払うわけであるから、定価は朝食の価値を表明するある種“記号”的側面もあるのだろう。また、宿泊客へのサービスという面では、選ばれるホテルとなるための一つのアイテムとして力を入れる朝食をセットにしたプランでお得感も打ち出し、予約客数の増加につなげたいというホテル側の強い思いを感じる。

ホテル朝食 りんごカレーが人気という青森のホテル(ホテルマイステイズ青森駅前/筆者撮影)

 ところで、ホテル朝食といえば「ブッフェスタイル」が定番で、事実人気がある。ブッフェスタイルを採用した場合、しない場合によるホテル側のコスト負担についてはここで触れないが、ホテルが朝食にどれくらいの原価をかけているのかは気になるところだ。

 ホテル朝食の今について前置きが長くなったが、今回は宿泊特化タイプのホテル朝食(ブッフェスタイル)について深掘りしたい。

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