攻める総務

【前編】TOMA×Sansan対談で学ぶ 迫る改正電帳法、残り1カ月で「するべきこと」「できること」とは?対談で学ぶ電帳法とインボイス(3/4 ページ)

» 2021年11月24日 09時00分 公開
[西田めぐみITmedia]

TOMA 持木:今、急務とされるのは義務化された電子取引への対応ですが、これに関してはPDFのファイル名に取引金額、年月日、取引先を入れて、指定のフォルダに保存。または、表計算ソフトを使って一覧表にまとめて、連番をファイル名につけることで検索要件に対応すればいい。訂正削除要件は、事務処理規程を備え付けて対応します。これが暫定対応です。

ALTALT PDFのファイル名を編集して保存(左図)。エクセルなどの表計算ソフトを使って作成する一覧表の一例(右図)。TOMAコンサルタンツグループ「業務改善・IT活用ブログ」を基に筆者が作成

 「22年1月の改正電帳法に間に合わない」と考えている企業であっても、この方法ならとりあえずは対応できます。ただし、「あくまで暫定である」ことを念頭に置いて、並行して業務フローの変更を進めていただきたい。

Sansan 柴野:「時間がないから、やむを得ず暫定対応するだけ」であって、最終保存形態ではないということですよね。

TOMA 持木:そうです。こんなことずっと続けたら、生産性がどんどん下がります。効率化を目指す法律に縛られて、生産性が落ちてしまっては本末転倒です。

Sansan 柴野:ペーパーレスとかテレワークって、実は昔から推奨されていたと思うんです。誰かが週1回出社して、必要書類をスキャンして各担当に配るとか、その上でファイル名に「部長承認済み」などと入れ、フェーズごとにフォルダ管理して運用する――みたいなことを実際に行っていた企業も複数知っていますが、みなさん共通して「現場が崩壊した」と話すんですよね。

 電帳法における「暫定対応」もそれと同じで、続けていたら現場が疲弊するだけ。「結局紙のままがよかった」なんて話になってしまう。そもそも、PDFにしてフォルダ管理するだけではデータ活用に結びつきません。

――「暫定対応」の期限は切るべきでしょうか?

TOMA 持木:企業規模によるとしか言えないでしょうね。業務フローの変更に3カ月かかる場合もあれば、1年は必要な場合もある。そこを見極めるためにも、残り1カ月で「できること」はアナログな暫定対応……なんですが、「するべきこと」はまず業務の棚卸、そして電帳法を長い目で見て業務フローの変更を進めていくことでしょう。

Sansan 柴野:そういう意味でも、僕はスタート時に重要なのは「小さく回すこと」だと考えていて。先ほど持木さんがおっしゃっていたように、部署ごとに業務フローがあり、「なぜその業務フローなのか」には事情があるはずです。何かのシステムを新たに入れて一律で回すのは難しい。

TOMA 持木:効率的に進めていくためにも、できるところから着手することは確かに重要ですね。

Sansan 柴野:はい。一気にドンと進めるのでは混乱しますし、教育コストもかかります。「この部署でうまくいったら、じゃあ次はこっちの部署に広げてみよう」といった、検証を兼ねたミニマムスタートは電帳法対応のポイントではないでしょうか。ステップがしっかり見えるので、周りも納得しやすい。

――「暫定対応」含め、電帳法対応はどの部署が先導するべきですか?

TOMA 持木:経理と情報システム部門、両方が協力しないと成立しないのが、この法対応なんですよね。私としては、専門チームを立ち上げることをおすすめします。

Sansan 柴野:そうですね、運用に乗せるまで面倒を見るチームは必要だと思います。僕は業務フローの変更は「整備」と「運用」の大きく2つに分かれると思うんです。整備は「川を流す幅を作る」ことです。こういうステップで、あなたの部署ではこうしてくださいというルール作りをする。そしてそのルールに従って「水を流す」、業務を行う運用へ移る。

 しかし、ちゃんと整備しました、ルール決めました、あとは運用してくださいと投げたところで、運用に乗らない。特に暫定対応では、こういった問題が今後出てくるだろうなと思ってます。

――どうすればいいのでしょうか?

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