大きな声ではいえないが、もう一つ理由があるという。前回の経験から「Go Toトラベルキャンペーンが再開されると、リピーターではないゲストからのネット予約が激増し、何度もトラブルを起こされました。正直いうとあまり歓迎できません」という。
”GoTo”と“トラブル”については、筆者にとって、もはやホテルの現場で話題となる定番の「ホテル本音トーク」であり、トラブルが無かったという話を聞いたケースは思い浮かばない。筆者なりの統計や分析は別の機会にゆずるが、困惑してきたホテルが多いのは事実だ。
メディアでは公表できないような“エグい”内容も決して珍しくなく、論理的な因果関係の分析を待たねばならないが、少なくともGo Toトラベルキャンペーンとホテルのトラブルについて統計を取れば興味深い結果になるのではないかと思料する。
このホテルについても、そうした苦い経験からGo Toトラベルキャンペーンにおいては、一般客からの予約に対しそのハードルとして料金を上げたくなるのが本音と話す。とはいえ、いきなり料金を上げると“Go Toトラベルキャンペーンに便乗したホテル”という烙印を押される。徐々に上げていけばそうしたイメージも持たれないという長期的視点からの料金設定というわけだ。
いわゆるロイヤルカスタマーに支えられているホテルということになるが、「コロナ禍だからこそ応援したいと多くのリピーターが訪れてくれた」という。
「予約サイトよりも電話による直接予約を重視しているのも特徴かもしれません」と予約担当者は話す。今日も常連のご夫妻から「遊びに行きたいけどそちらの天気はどう? 元気でやっているの?」などと予約の電話があったと話してくれた。思わず「長時間の電話対応は業務効率が下がりませんか?」と質問をしてしまった。
「いえいえ、ネットとは縁遠い高齢の顧客も多いですし、直電は最高のコミュニケーションツールであることをコロナ禍で再認識しました」と満面の笑みで話してくれた。ホテルの神髄はこんなところにあるのかもしれない。
瀧澤信秋(たきざわ のぶあき/ホテル評論家 旅行作家)
一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。
日本を代表するホテル評論家として利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。評論対象は宿泊施設が提供するサービスという視座から、ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、旅館、簡易宿所、レジャー(ラブ)ホテルなど多業態に渡る。テレビやラジオ、雑誌、新聞等メディアでの存在感も際立ち、膨大な宿泊経験という徹底した現場主義からの知見にポジティブ情報ばかりではなく、課題や問題点も指摘できる日本唯一のホテル評論家としてメディアからの信頼は厚い。
著書に「365日365ホテル」(マガジンハウス)、「最強のホテル100」(イースト・プレス)、「辛口評論家、星野リゾートへ泊まってみた」(光文社新書)などがある。
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