ホテル業界にとって、Go Toトラベルキャンペーンの再開は、総論として賛成であることは疑いのない事実だ。自治体のキャンペーンも同様で、どのような形であれ宿泊需要の喚起につながることは宿泊業としての生き残りがかかっていると言っても過言ではない。
一方で、そうした需要の高まりに対して困惑した現場の声をよく聞く。中でも“人の問題”は深刻。長らく続いているコロナ禍の影響で、需要が激減。そして、業務縮小や一時休業に追い込まれる施設などが続出した。
人員削減も当然の流れで、休業状態のホテルを管理するマネージャークラスのスタッフは残ったとしても、ゲストが訪れない以上、現場の第一線で接客に従事するスタッフが削減されるのは経営面を考えれば自然の流れなのか。
今、某リゾートホテルの支配人を悩ませているのが“人材不足”だ。そのホテルでも「経営会社の方針により相当な数のスタッフが整理され削減されました」という。中にはベテランスタッフもいたというが、そんな状態にして「キャンペーンのような急激な需要回復がもたらされても、対応できる人材がホテルにはいません」と支配人は吐露する。
接客にも相応のスキルが必要であり、急に相応な人材を集めようとしても困難だというのは理解できる。支配人の頭を悩ます日々が続く。
何らかの理由からわれわれが購買行動を控えた結果、需要が先送りされていくことがよくある。ペントアップ需要ともいわれるが、全国規模で実施される旅行需要喚起策のGo Toトラベルキャンペーンはまさにその“何らかの理由”となる。前回のキャンペーンでも同様の状況があったと複数のホテルから話を聞いた。
すなわち「Go Toトラベルキャンペーンの開始時期が決定・発表されると、開始前までの予約が入らなくなったり取り消されたりするのです」というのだ。一方で、コロナ禍で宿泊需要は激減していたのだから、そもそも予約などほとんどなかったのではないか。という意見もあるかもしれない。
そうした点についてあるホテル支配人に尋ねてみると「Go Toトラベルキャンペーンの再開は、コロナ禍の状況が好転してきたから実施されるのであり、キャンペーンの有無に関係なく徐々に予約が入り出し、11月の行楽シーズンなど、満室の予約があった日も多くありました」という。ゆえに、再開時期の発表後に予約が減少したり取り消されたりする状況は「よりこたえる」と話す。
他方、人気観光地の高級ホテルマネージャーは「秋の行楽シーズンと合わせるように年明けの早い時期にキャンペーンを実施するとの発表があったため、前回と同様に相当なダメージがあるかと予想していました。しかし、意外にそのようなことはありませんでした」ともいう。「今回のキャンペーンでは、高級ホテルの恩恵は限定的ということが功を奏しているのかも」と分析する。
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