いきなりで恐縮であるが、ホテル評論家として活動する筆者のホテル取材は“覆面取材”と“正式取材”に分かれている。
前者はその名の通り事前にホテル側へ取材と知らせることなくチェックイン、180項目ある独自のチェックリストを作成する。消費者目線での是々非々を評論の視座としているため、できる限りステレオタイプ的な先入観は廃すことを大切にしているが、ゆえに「良いホテル/悪いホテル」という表現は(少なくとも評論仕事の上では)しない。
同一のホテルでも、ある部分を絶賛することもあれば批判的になることもある。ただ、批判だけで終わらせることはなく、問題点と思われる項目については、後日正式に取材を申し入れた上で、そうなった理由や背景など取材、公表できる部分は情報発信していく。正式取材も重視しているゆえんだ。
前置きが長くなったが、そんな正式取材では、ホテル側の公式的な見解、すなわち当たり障りのない“よそゆき”の回答が得られるわけである。そのような回答も重要だが、より重視しているのは、正式取材をきっかけとしたホテルスタッフとの“ある種のチャネル”だ。その後長く続くお付き合いのきっかけにもなり、立ち話や飲みの席で何気ない話の中にホテルのリアルが飛び出す。
「それってすごいですよね、記事にしたいのですが」というと「えっ、そうなんですか? 大した話じゃないですがどうぞとうぞ(ただし匿名で)」というようなやりとりが多々ある。多くはホテル側からは表向きにできない“ネガティブ”な内容ではあるが、できれば一般の人に知って欲しいとの思いもあるようだ。特にコロナ禍においてはホテルが低稼働だった故、そうしたリアル取材(というかざっくばらんなホテル談義)の時間が多く取れた。
コロナ禍と対峙しつつ大変な時期を経てきたホテルであるが、新規感染者数の減少、各自治体の旅行需要喚起キャンペーン、そして再度のGo Toトラベルスタートなど、ホテルにとって明るい話題もちらほら出てきている。ポジティブムードに包まれつつある中で、今回はいまこの時期ならではの印象的なホテルの現場スタッフ話などを紹介したい。
現場のいちスタッフが感じていることが本質を突いている場合や、一般メディアに出てくる情報とは違った側面からの裏話に“ホテルのいま”が見えてくるかもしれない。
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