ここまで説明してきた通り、過去5年間に海外で最も再生された日本のアーティストの楽曲のその多くがアニメ作品のテーマソングであり、海外の人たちにとってアニメは日本の楽曲を知る上での入り口となっているのである。
2002年に米国のジャーナリスト、ダグラス・マグレイがJapan’s gross national cool を提唱して以降、日本の海外のおけるソフトパワーはクール・ジャパンとして認知され、2010年6月には、経済産業省が「クール・ジャパン室」を設置し、「クール・ジャパン戦略」が日本の国策と位置付けられてきた。筆者自身は世の中から敬遠されてきたオタクが支えてきたアニメ文化が持ち上げられている点には、若干の違和感を覚えるところもある。また、オタクの消費心理などが十分に考慮されないまま運営され(※9)、クール・ジャパンという言葉自体がお飾りにすぎないような印象を受けることもある。
しかし、本ランキングからも分かる通り、日本のアニメやそれを取り巻く文化は日本を代表するコンテンツとなっており、海外の消費者が日本に対して「クール」と感じてる起因となっていることは確かである。また、日本のアニメ作品が、他の日本文化に興味をもつきっかけにもなっている。言い換えればクールジャパンという言葉が提唱されてから約20年がたった今でも、サブカルチャーが日本に対する興味への入り口となっているのである。今回のランキングの様に、ただ「海外で人気のJ-POPはこれなんだ」と認識するのではなく、なぜこの曲が聞かれているのか、消費されているのかという点まで深堀りすることが、海外から見た日本を理解するうえで重要な視点であると筆者は考える。
(※9)もちろん映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマなどのポップカルチャーやゲームなどといった、日本のサブカルチャーなどのコンテンツを指す場合以外にも、食文化・ファッション・現代アート・建築といった、日本の現代のハイカルチャーを指す場合もある。一方で、日本の武士道に由来する武道、伝統的な日本料理・茶道・華道・日本舞踊など、日本の伝統文化のコンテンツを指す場合もある。
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