インスタカートは独自のサプライチェーンを持ちません。いわば、仲介として数多くのスーパーマーケットと顧客をつなげる役割を果たしています。その場合、プラットフォームとしての価値は、取り扱うスーパーの多さで決まります。
アメリカの場合、大手スーパーが市場の4割を占めるため、とりわけ全米で展開している大手スーパーチェーンの商品を取り扱うことの意味は大きくなります。
例えば以前、ホールフーズ・マーケットがアマゾンに買収されたことで、インスタカートからホールフーズの商品が買えなくなったことは、記憶に新しいです。この背景には即日配達サービス拡充を狙うアマゾンの動きがありました。
スーパーと長期的に提携してもらうには、包括的なサービス提供が不可欠です。そのため、インスタカートのようなデリバリーアプリ企業は、単純に集客をするだけでは優位性を維持できなくなってきているのです。
このようなニーズを受け、インスタカートは先日レジ機能付きショッピングカートを提供するCaper AI社を3億5000万ドルで買収したと発表しました。この買収は、インスタカートが拡大するリテール向け、「B2B2C」のテクノロジー戦略の一環とされています。
同社は、主力のオンライン注文・食料品配送に加え、店舗が顧客に新しい価値を提供するための製品やサービスを構築・拡大する動きを強めているのです。
実際、インスタカートはCaper AI買収の2週間前にも、食料品小売業者のためのエンド・ツー・エンドの注文管理とケータリングを可能にするSaaS型注文管理システム(OMS)を擁するFoodStorm社を買収し、店舗がケータリングスタイルで大量の既製食品を販売・管理するソリューションの提供に進出しました。このことからも、インスタカートが狙うのは、スーパーマーケットリテールへの包括的なサービス拡充であることが分かります。
インスタカートCEOのFidji Simo(フィジー・シモ)氏も、TechCrunchのインタビューで「われわれは、提携する小売企業のために、次の時代に必要なあらゆるサービスをオンライン・オフライン問わず提供していきます。縦割り構造を取り払った統合的なサービスが必要とされる小売業界において、われわれこそがリテール・イネーブルメント・カンパニーであると考えています。なぜなら、すでに、配送と受け取りの両方をカバーするコマース・サービスを実現する広大なプラットフォームを持っているからです」とコメントしています。
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