もはや「大企業誘致」は時代遅れ! 今、地方経済の活性化で「地場スーパー」が大注目なワケなぜ、「勝利の方程式」は崩れたか(2/4 ページ)

» 2021年12月28日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 ゆめタウンのある通り沿いには、スシロー、くら寿司、洋麺屋五右衛門、マクドナルド、スターバックス、星乃珈琲店などの外食チェーンに加えて、地場系の外食店が多数、軒を連ねている。物販では、ゆめタウンのライバルであるイオン系スーパーのマックスバリュや業務スーパー、地場スーパー「鮮ど市場」もあり、コスモス薬品、ドラッグストアモリなどのドラッグストアもある。

 少し離れた国道57号線バイパス沿いにも大型小売店が増えていて、ケーズデンキ、MEGAドン・キホーテ、HIヒロセ(スーパー+ホームセンター)、ザ・ビッグ(イオンのディスカウントストア)、大型ホームセンターのハンズマンなどが林立する。19年、合志市にはニシムタ(鹿児島のスーパー+ホームセンター運営)の大型店を核店舗とする敷地面積10万平方メートルの複合商業施設であるアンビー熊本がオープンするなど、買物、外食には正直全く困らない。それこそ、30分程度で行ける熊本市内の中心市街地に出掛ける理由がほとんどないほどの充実ぶりだ。

熊本市街も便利だが……(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 この熊本市の東側に広がる郊外エリアは、大企業製造拠点の誘致による雇用の確保、住宅地の整備、商業環境の整備が相まって、人口が増加するという好循環を生み出した。半導体最大手TSMCの大規模工場が誘致されれば、波及的効果も含め、今後も人口増加が維持される可能性は高い。

もはや成り立たない「企業誘致」起点の地域活性

 今やほとんどの自治体が人口減少から抜け出せない状況の中、このような人口増加を実現している当エリアは、数少ない工場誘致の成功事例ということになるだろう。こうした事例は長年かけて産業インフラを整備してきたという地元の努力のたまものなのであろうが、大企業誘致による産業振興の最後の成功事例かもしれず、これから他地域への横展開ができるモデルとはいい難いだろう。この地域が自動車、半導体という産業を誘致したのは慧眼(けいがん)であることは確かだが、これまでの他地域での大企業誘致後の成否が、国内産業界の浮き沈みに左右されていることを考えると、地域の活性=大企業の工場誘致という勝利の方程式が成り立つ時代では、もはやないといえる。

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