水切りとは、水面に向かって石を投げることである。回転をかけた石を投げることで、その石は水面で跳ねる。ぴょんぴょんと跳ねた回数を競うわけだが、そのためには石の形状がポイントになる。「懐かしいなあ。子どものころによく遊んだよ」と昔の思い出にふけった人もいるかもしれないが、その石を運ぶカバンを開発したのだ。
完成品を見ると、手を抜いていないことがうかがえる。素材は滑らかな手触りのスムースレザーを使っていて、つるっとした石に馴染むような工夫をしている。内装には防水レザーを使用しているので、水にも強い。平面な革を立体にするために、絞り加工という技法を取り入れていて、丸い石を入れやすいようにした。ポケットに石がすっぽり入りつつも、頭の部分は見えるようにしていて、ベルトは肩掛けも腰掛けもできる2Way仕様になっているのだ。
……と、ここまで読んで、疑問を感じた人もいるかもしれない。「水切り石を入れるカバンであることはよーく分かった。けど、肝心の石が取り出しにくいのでは?」と。
心配ご無用である。川に向けて水切りをするときには、腰に巻くスタイルにしてポケットを下向きにすれば、ささっと片手で取り出せるような設計にしているのだ。
水切り石専用バッグを開発するにあたって、プロジェクトチームは悩みに悩んだ。スイカ、雪だるま、ワイングラスときて、さて次は何をつくろうか? と考えたときに、過去のカバンを超えるモノでなければいけないという使命感がわいてきた。斬新なアイデアが求められたわけだが、「これだ!」と言えるモノがなかなか浮かばなかったのだ。
社内でアイデアを募集したところ、110個のアイデアが集まった。すべて目を通したところ「灯(あかり)を運ぶカバン」など、「おっ!」と感じるモノもあったが、採用は見送った。再度、プロジェクトメンバーが「ああでもない」「こうでもない」といった議論を重ねていくなかで、20代の女性がこのようなことを言った。「子どものころ、水切りに夢中になったよね。とっておきの水切り石を運ぶことができるカバンはどうかな?」と。
その場で、発案者にラフ画を描いてもらうことに。西部劇に出てくるガンマンが腰に巻いているベルトと似ていて、水切り石を運ぶカバンであれば「わくわく感やときめき」を伝えることができるのではないかと考え、開発が進んでいったのである。
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