エルサルバドルがビットコインを法定通貨にして大損? IMFも懸念を表明した理由古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)

» 2022年01月28日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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IMFは警鐘を鳴らす

 そうはいえども、国連の国際通貨基金(IMF)はエルサルバドルのビットコイン法定通貨化に眉をひそめる。エルサルバドルは今後、ビットコイン連動債券を10億ドル発行する計画を表明している。エルサルバドル内部でビットコインを少額買うだけならまだしも、このような既存の金融商品を合成したような手段を使い、世界各国の投資家から資金調達することで、国際的な金融不安につながらないかをIMFは心配しているようだ。

 そこでIMFは25日、エルサルバドルに対し、ビットコインを法定通貨とする決定を取り消すように求めた。これはあくまでIMFのアドバイスのようなもので、ビットコインに傾倒しているブケレ大統領を説得するような法的拘束力はない。

 しかし、エルサルバドルの主要な法定通貨である米ドルをめぐる金融政策は、現在引き締め傾向にある点が見過ごせない。ビットコインのような価格変動リスクがリターンの源泉となる商品は、利上げ相場にはめっぽう弱い。今後もビットコインの価格が下がれば、実態以上にビットコインの損失がクローズアップされてしまい、国民の支持も失うリスクがある。

 足元の環境はバブルと断じることはできないが、後世から見たらバブルといわれる可能性のあるイベントが複数あった。今回のビットコイン法定通貨化の他にも、Facebookがメタに社名変更したかと思えば、メタバースのOS開発を断念するといった壮大な計画の”現実”が見えてきている。

 今後もビットコインをはじめとした市場の後退が顕在化すれば、決して私たちにとっても対岸の火事ではない。これからは膨らんだ期待のより戻しに一層注意を払うべきだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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