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「転職は裏切り」と考えるザンネンな企業が、知るべき真実河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2022年02月10日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 「大卒の新入社員のうち3割が3年以内に辞めてしまう」のも、キャリアの節目ストレスによるものと解釈できます。節目ストレスへの対処として「離職」を選択するのです。

 実際、新卒3割離職はあたかも「ゆとり教育の問題」のように報じられますが、バブル期の1987年の離職率も29.3%。92年は23.7%と若干低下し、2004年の36.6%と高くなるなど多少の変動はあるものの、おおむね3割が辞めています。3年で3割が辞める状況は30年間、変わっていないのです(厚労省調べ)。

いつの時代も、おおむね3割の新卒が3年以内に辞めている(提供:ゲッティイメージズ)

 その一方で、人は利益より損失に対して強く反応するため、なかなか一歩前に進む踏ん切りがつかないのも事実です。

 件のTwitterのケースでは、図らずも上司の意地悪な一言が背中を押した。もし、上司が本気で引き止めたければ、部下の曖昧な不安に寄り添う気持ちが必要でした。

 ほんの一瞬でも立ち止まって考えれば、「今のお前は通用しない」と言われて、「そうですよねー。んじゃ、もっとここで頑張ります!」と答える人など、いないことが分かるはずです(上司の真意は計りかねますが……)。

 いずれにせよ、日本では生産性の低さの大きな要因として「雇用の流動性の低さ」がたびたび話題となるのに、いまだに「転職=会社への裏切り」と捉える意味不明な企業や上司が存在する。

 「会社を辞めたい」と切り出した途端、「誰に誘われたんだ!?」と社員たちに疑いのまなざしを向けたり、他社からの引き抜きを警戒したり、ひどい場合は「今、辞めるんだったら違約金を払え!」などと脅すケースも。「手塩をかけて育ててきたのに、今さら裏切るのか?」という思いが、ハラスメントにつながってしまうのです。

 私がインタビューした人の中にも、上司から「辞めないでくれ」と懇願されため、仕方がなく退職を断念したところ、閑職に異動を命じられたケースがありました。いわば、「裏切るとこうなるんだよ」と他の社員への見せしめです。

 こういった教条主義のまん延した組織があるという現実は、残念としか言いようがありません。

 しかしながら、「光」もあります。

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