ストッキング大手のアツギは1月20日、青森県と岩手県にある工場を閉鎖すると発表した。業績不振が原因で、中国の山東省煙台市にある2つの工場の生産に集中するとしており、大きな波紋を呼んでいる。
特に、青森県むつ市にあるアツギ東北むつ事業所は、日本最大級のストッキング工場で、500人以上を雇用。人口約5万5000人のむつ市の基幹的な産業だった。そのため、地元の下北地域では、産業の屋台骨が突然崩壊するような大きな喪失感が広がっている。
新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークが普及。主力のパンティーストッキング(以下、PS)の売り上げにも大きく影響した。今後、どこまで需要が回復するかもはっきりせず、工場規模を縮小せざるを得なかったという。
しかし、いくら人件費が高いといっても国内の雇用を切り捨て、中国に限らずカントリーリスクもある海外の工場に全面依存する生産体制が、果たして持続可能なのか。長い目で見てアツギに恩恵をもたらすか、産業界からも疑問視する声が多い。
アツギの2021年3月期における連結決算は、売上高約162億円(前年同期比17.3%減)、最終赤字約38億円と厳しいものだった。
しかも、不振はコロナ前からの構造的なもので、20年3月期は売上高約196億円(同10.3%減)、最終赤字約59億円。19年3月期も売上高約219億円(同8.7%減)、最終赤字約31億円に終わっていた。つまり、コロナ禍のみが原因で売り上げが減ったわけではないから、深刻なのである。
同社が公式Webサイトで公開している最も古い決算は2003年のものだが、その頃の年商は約300億円あった。約20年で半減していて、年を追うごとに衰退しているのが実態だ。
22年3月期では、第3四半期までで売上高約156億円(前年同期比49.7%増)と回復してきたが、四半期純損失が約9億円の赤字となっていた。このままでは4年連続で期末最終赤字を計上するのが濃厚で、抜本的な改革が必要な情勢だった。
そこで国内工場の撤退という、思い切った決断をした。
さらに、アツギは2月18日の取締役会で、現社長の工藤洋志氏が相談役に退き、新社長として帝人フロンティア元社長で同社特別顧問の日光信二氏を迎える人事を発表した。日光氏は3月31日付で帝人フロンティアを退社して、4月1日にアツギの顧問に就任する予定だ。
6月下旬に開催される定時株主総会後に開かれる取締役会において、正式に新社長就任が決定するスケジュールとなっている。
日本初のPSを開発し、レディースファッションに多大な貢献をしてきた名門企業のアツギに何が起こったのだろうか。
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