競合である三越伊勢丹ホールディングスなどと同様、そごう・西武も不採算店の閉店を進めてきた。
現在、そごうは横浜、千葉、大宮、広島の4店。発祥の地、大阪からは既に姿を消した。
一方の西武は池袋、渋谷、所沢、戸塚、福井、秋田と6店ある。計10店にまで減った。両チェーンがセブン&アイの傘下に入った時点で、国内に28店あったが、次第に縮小。コロナ禍に入って、そごうが西神、徳島、川口を閉店。西武が大津、岡崎を閉店した。合計、5店も撤退した。
セブン&アイは、そごうや西武を取得する以前にも、1985年に米国のロビンソン社と提携して、春日部にロビンソン百貨店をオープン。一時期ロビンソンは、札幌、宇都宮、小田原にも店舗を構えて4店まで増えた。スーパー、コンビニだけでなく、百貨店もラインアップに加えて、総合小売業を目指していた。
ダイエーもフランスのプランタンと提携して、プランタン銀座を経営していた時期があったから、総合小売業への志向は決して珍しくない。
しかし、90年代以降、百貨店という業態がショッピングセンターや駅直結のファッションビルに押されて客離れを起こした。セブン&アイも有効な需要回復策を打ち出せず、閉店に閉店を重ねて、百貨店経営に疲れてしまったようだ。
そごう・西武の売却先を選ぶ1次入札が、2月21日に締め切られた。当初、手を挙げるとみられた三井不動産と三菱地所は見送ったと報道されているが、複数の入札があったそうだから、その中から決まるだろう。
そごう・西武の店舗は駅前1等地が多く、タワーマンションにするなど再開発のプラン次第で超優良物件に化ける可能性が高い。売却先の再建手腕が問われる。
特に、池袋は豊島区が駅前の車道を撤去して、歩行者専用道路にする大胆な街の改造計画を発表している。地域の商業施設の中核である西武の果たす役割も大きい。
バリューアクトのセブン&アイはコンビニに専念すべきという提言は一理あって魅力的だが、企業には雇用を守る責任もあるので、資本の論理だけで動けない。
M&Aで取得し、15年ほど経営して、改善の光が見えない百貨店は売却せざるを得ない。一方、自ら立ち上げたスーパー、銀行などはもっと面倒を見て発展させたいというのが、セブン&アイ経営陣の本音だろう。
両社の攻防は、企業観の違いが浮き彫りになっていて、興味深い。バリューアクトがここまで熱くなれるのも、セブン-イレブンの将来性を高く買っているから。日本のコンビニは自信を持って、世界で勝負してもらいたいものだ。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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