しかし、どんなに秀でた外食の企業でも失敗はある。全戦全勝のイメージが強い「叙々苑」ですら、全ての店で成功したわけではない。
ショーグンバーガーも、長崎県の稲佐山に20年7月に出店した店は、今は別のバーガーショップに変わっている。
牛宮城は、少なくとも5年は続かないと、成功したとはいえないのではないか。オープン時に満席でも、2〜3年で閉店したら、あっという間に無くなったというイメージになる。運営の方でも、オープン景気が一段落すれば売り上げが落ちてくるのを予想して、ランチやモーニングの準備を進めているようだ。
月額280万円の高額家賃を払い続けて店舗を維持していくには、一般に家賃の10倍の売り上げが必要とされるから、牛宮城は1カ月で2800万円を売らなくてはならない。1日93万、ざっくりと100万円だ。牛宮城では和牛を中心に、交雑牛(和牛と乳牛のハーフ)なども扱っていて、すき焼きのコースもある。顧客単価は「食べログ」の1人当たりの実際に使った金額の分布図を見ると、平均して1万1000〜1万2000円くらいのようだ。
席数は80席だから、1回転すれば十分で、「これくらい軽い」という人もいる。しかし、同店は個室が多く、満卓でも全部席が埋まっているわけではない。連日連夜、何年も席を埋め続けるのは大変だ。
牛宮城は渋谷センター街、井の頭通り沿いのビルにあるので、人目に付きやすく、芸能人・有名人がお忍びで使うという需要は期待できない。家族で会食する立地でもない。接待で使われるイメージもない。周囲を歩いている若者たちは、高すぎて来れない。
動画を見た印象では、宮迫氏も本田氏も、いつになるかは分からないが、コロナ後に再開されるインバウンドの需要に期待しているようだ。コロナ前のように、渋谷のスクランブル交差点に外国人観光客があふれるようになれば、この立地が生きてくる。海外の人にとって、和牛の訴求力は強い。
“超高い”といわれる1合680円の「おひつごはん」で行われる茶碗が選べるサービスも、外国人に受けるだろう。しかし、採算が合わず、コロナ禍が長引くようなら、撤退も辞さないでもらいたい。
家賃が高く難しい立地の牛宮城だが、本田氏の経営手腕に期待したい。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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