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本社共通費の配賦方法 できるだけ工数をかけない方法は?管理会計Q&A(1/2 ページ)

» 2022年03月23日 07時00分 公開

連載:管理会計Q&A 前回はこちら

Q 前回のQ&Aで、煮え切らない気持ちはありますが、配賦の方法については「理解するしかない」ということは分かりました。

 しかし仮定に基づく配賦でしかないのに、予算策定や予実分析で、経理部門からはいろいろなことを求められていて、大変な工数がかかっています。仮定を前提としているのに、表計算ソフトに多くの勘定科目を入力し、各部門に配賦するシートを作成して、多大な工数をかけていることにも疑問があります。

 配賦方法を一度決めたら、できるだけ工数をかけず、毎期配賦計算を行える仕組みはないのでしょうか。また、配賦される現場部門でも、配賦の過程や結果を分かりやすく利用できるような仕組みはないのでしょうか。

A まず、配賦に多大な工数をかけている場合、作業内容に問題がないか検討することが重要です。また、共通費を配賦することに特化した仕組みで、導入実績があるものはあまり見受けられません。しかし、財務会計システムや原価計算システムの機能の一つとして、共通費を配賦する機能を備えているシステムがあります。

解説

(1)配賦方法はあまりこだわらず、細かく複雑なものにしない

 まず、配賦計算を自動化する仕組みを検討する前に、非常に重要なポイントがあります。そのポイントとは、配賦方法をあまり複雑なものにしないということです。

 共通費は、現場部門では発生していない費用ではありますが、全く関連がなくもない費用です。例えば、人事部門の費用は、現場で働く社員のために発生しています。また、経理部門の費用は、現場での活動を記録してまとめるために発生しています。

 従って、共通費を現場部門の活動と関連付けて、なるべく「意味のある配賦」にしていきたくなります。この「関連付け」にこだわり過ぎて、細かく分解しすぎると大変な工数がかかり、間違いも発生しやすくなります。そして、良かれと思って大変な工数をかけているにもかかわらず、現場部門からは納得されず、不平不満を言われます。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 共通費の中には、現場部門の活動と関連性が強いものと弱いものがあります。現場部門の活動と関連性が強い共通費の例としては、経費精算のために経理部門で処理をする時間に関わる人件費があげられます。

 経費精算は、領収書や請求書などのエビデンスの枚数が増えれば増えるほど、経理部門で処理に時間がかかるのが一般的です。従って、経費精算のために発生する経理部門の人件費は、現場部門から提出されるエビデンスの枚数を配賦基準にすれば、かなり納得性の高い配賦方法になるでしょう。

 しかし「経費精算のために経理部門で処理をする時間」を把握することは容易ではありません。その時間を把握する工数が別途かかります。また、この「経費精算のために経理部門で処理をする時間」にかける経理部門の時間単価(時給)を何にするかも問題です。

 残業を含めた、経理部門の毎月の人件費総額を、経理部門の社員がその月に実際に働いた時間で割れば良いように感じます。しかし「ちょっと待てよ……経理の残業は何のために残業したんだ? うちの部門の経費精算のためだけに残業したわけじゃないなら、その残業時間や残業代は、時間単価から控除しないと納得できない!」といわれてしまうでしょう。

 そうすると、経理部門では、残業の内容と時間を記録しながら残業をしなければならなくなります。残業内容と時間を記録しながら残業をするなんて、誰が望んでいるでしょう。経理部門ではやりたくないでしょうし、社長も望んでいるはずがありません。

 先に関連付けにこだわり過ぎて、細かく分解しすぎると大変な工数がかかり、また間違いも発生しやすくなる、といったのはこのことです。このように、現場部門の活動と関連性の強い共通費でも大変なのですから、関連性の弱い共通費を配賦するのは、さらに大変です。

 従って、しょせん現場部門との関連性を正確に把握できない共通費なのですから、細かい関連付けはやめて、単純な配賦を心掛けることが最も重要なのです。

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