Allbirdsは、製造のノウハウや過程をオープンにしているそうです。最も環境に害を与えているソール部分には、自社開発したトウゴマオイル由来の材料を使用。その製造情報をオープンにして、他の企業に共有しています。開発に多額なコストと時間を要したにもかかわらずです。
ほとんどの企業が自社で培ったノウハウは企業秘密として、閉じたものにすることでしょう。しかし、同社の考え方は違います。環境貢献をする企業がもっと増えた方が地球のためであるとしています。そして、自社だけでは大きなインパクトにならないことも、たくさんの企業と取り組むことで実現するという「共創」の精神で臨まれています。ビジネスの観点でも環境配慮をした商品の市場がもっと広がることで、自社の業績にも貢献するという発想なのです。
ECの市場規模拡大は、コロナ禍の影響で加速しました。日本では店舗が飽和し、既存店の売り上げを拡大することは大変難しい状況になりました。かといってECだけで消費者は満足するものではありません。
蓑輪さんは、次のように説明します。「子どものためにプレゼントを選ぶとき、通販のURLが記載されたメールのやりとりだけで買い物が完結するのは寂しいじゃないですか。一緒にお店に選びに行って、試着しながら本当に気に入ったものを家族で話し合いながら決める方が楽しいと思いませんか。お店にはそういうコミュニケーションを発生させる魅力があると思うんです」
店舗で実際に商品を見て、ECでは気付かなかった商品を発見し、実際に試着してみる。従業員が、通販サイトの文字だけでは伝わってこないブランドストーリーや、具体的な利用シーンを教えてくれる。このように、さまざまな店舗体験がAllbirdsには備わっています。店舗は売り込む場所ではなく、世界観や環境哲学を伝える場所となっています。そして、「世界一の履き心地」と評価される理由を理解する場所となっています。店舗でAllbirdsのファンになった顧客は、ECで他の商品も購入しリピート顧客になっていくことでしょう。
蓑輪さんはお店で一番大切なのは”人“であると強調していました。これと同じようなことを、マクドナルドやスターバックスの人が話していたのを筆者は聞いています。
店舗スタッフが自社ブランドを愛し、ブランドのストーリーから機能までを深く理解しています。筆者が店舗に行った際、スタッフに話しかけてみると、素材や企業のストーリー、自身がなぜAllbirdsで働きたいと思ったか(環境貢献への共感)といったことを話してくれました。
Allbirdsの接客は「売り込む」というよりも、「教えてくれる」という感覚の方が正しいかもしれません。現場スタッフがそのようなスタンスになるためには“任せる”ことが鍵だそうです。それがスタッフ同士の連携を生み、顧客の意見を自然と引き出すことにもつながるとのこと。世界的に注目される企業は、デジタル面の取り組みに目がいきがちです。しかし、真に強い企業は、本質的な製品哲学や人の価値の部分に焦点を当てているのが共通点です。
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