澤柳氏はアパレル業界に身を置く人間として、大量生産・大量消費という現実をずっと突きつけられてきたと話す。18年に高級ブランドのバーバリーが売れ残り商品を焼却処分したことが話題になったが、業界ではそれが当たり前だった。
「古着として販売することもできますが、最終的にはごみ箱に捨てられて焼却処分されてしまいます。それ以外の道はないのかを考えた時に、自然に還すのが最善策だと感じました」(澤柳氏)
環境省の調査によると、家庭から出される衣服のうちリユース・リサイクルされる割合は約34%。約66%はごみとして処分されてしまう。残り全ての衣服が回収され、リサイクルされ、原材料として生まれ変わったとしたら、最大で年間2500万トンの二酸化炭素排出が削減できる計算になる。これは、東京都における年間の二酸化炭素排出量の約4割に相当する。
服や裁断くずを土の中に埋めるだけだと、ただの産業廃棄になってしまう。そこで、コンポストを使用したり、土壌を管理したりすることで、土の中の生態系を破壊せずに服が自然に還るようにしている。
また、同社は農園で野菜も栽培している。今後は、農業コミュニティを立ち上げる予定だという。土に還る服を購入した人たちが、着古した服を土に埋める。その土で育てた野菜を食べるという循環型社会の構築にチャレンジしていく。
そうは言っても、現在のサブスク利用者は110人ほど。アパレル業界の悪しき慣習を壊すほどの影響力があるとは言い難い。さて、どうするのか。澤柳氏は今後の戦略について「循環購入」をキーワードに挙げる。
サブスクビジネスは売り切り型と比較して、服の製造や仕入れにかかる原価の回収期間が長期化する。そのため、サービス開始当初から大幅に利用が伸びるようなケースでないかぎり、短期的に売り上げが低迷し赤字が続く可能性がある。キャッシュに余裕がないとチャレンジしにくいビジネスなのだ。
「循環購入」は、通常商品の3分の2の価格で商品を販売し、着古したら返品するスタイル。サブスクをサブ事業として置きながら、循環購入の利用者を増やしていきたいという。
キッチンから出る生ごみをコンポストに投入し、ごみの量を減らす動きは、レジ袋の有料化や家庭用コンポストの登場に後押しされ、少しずつ浸透してきたように感じる。一般家庭で着古した服をコンポストに入れ、処分する未来もそう遠くはないかもしれない。
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