「外泊すると家賃が下がる」物件は定着するのか 都市部で広がる“つぎの住処”週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2022年04月03日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

逆風だと思っていたら、実は順風

 2拠点生活をしたいと思っている人は、どのくらいいるのか。自分の家を貸してもいいと思っている人は、どのくらいいるのか。データがないので、事業チームの小池さんはロジカルに説明することができなかった。しかもコロナの感染が広がって、人の流れが抑制されていたタイミングである。ただ、逆風だと思われていた風の向きが、実はこの事業にとって順風だったことが分かってきた。何が起きていたのかというと、ホテルで暮らす人がじわじわ増えていたのだ。

 ご記憶にある人も多いだろうが、新型コロナの感染が広がって、宿泊施設は大きなダメージを負った。緊急事態宣言によってキャンセルが相次ぎ、海外からの観光客がいなくなったわけだが、関係者も指をくわえて黙っていたわけではない。「30泊〇〇万円」といったプランが次々に登場して、「ワーケーションのような感じで利用してみるか」といった人が増えていった。

 「ホテルで暮らすことは、新しいことではない」といった雰囲気が芽生えたことによって、「自分の部屋を貸す」「他人の家に泊む」「2拠点で生活を送る」といったことに抵抗感を覚える人が減ったのかもしれない。社内での調整も少しずつうまくいくようになって、21年5月に事業はスタートしたのだ(賃貸開始は6月から)。

 そんなこんなで募集を始めたところ、先ほどご紹介したように、想定以上の申し込みがあった。問い合わせをした人の多くは首都圏(特に東京が多い)に住んでいて、仕事の関係で地方や海外への出張が多く、部屋を空けることが多いそうだ。

 東急はリレントの物件を大々的に宣伝していないのにもかかわらず、「家を借りたい」という人は増えていって、ウェイティングリストが埋まっていく。物件に空きがでると、その人たちに声をかけて契約を結ぶといった流れができていった。というわけで、稼働率はほぼ100%で推移しているという。

 人気の秘密を聞いたところ「やはり家賃が安くなることをメリットに感じている人が多いですね。あと、部屋を貸すと清掃をしてくれるので、掃除の時間を短くすることができる。その時間を使って、趣味などを楽しんでいる人も多いようですね」(小池さん)

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