世界の秩序が変わり、冷静に判断する時フィデリティ・グローバル・ビュー(4/4 ページ)

» 2022年04月07日 16時00分 公開
[Andrew McCafferyフィデリティ・インターナショナル]
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リスクを増大させるADRと新型コロナ関連のニュースフロー

 中国系企業の米国預託証券(ADR)の上場廃止を巡る最近のニュースは、地政学的な対立と関係していると見られているのが現状です。本質的には、ファンダメンタルズというよりも米国から香港への流動性のシフトではあるものの、これまでの背景を踏まえると、投資家がリスクを測る上で制裁リスクとの関連性は無視できません。

 また、中国の「ゼロコロナ政策」は、新型コロナの変異株の再流行という大きな課題に直面しています。最近では、上海市の一部や深セン市のロックダウンのほか、いくつかの省ではクラスター発生を抑える措置も取られました。こうした対応は、さらなるロックダウンなどの可能性も相まって、欧州が広範なスタグフレーション環境に向かいつつあり、あからさまな景気後退に陥るリスクを抱えているという私たちの見通しとも整合しているものですが、中国とグローバル経済に、新たな悪影響を及ぼす可能性があります。

いまは耐え忍ぶ局面

 時代を象徴する地政学と経済的な(現実と認識・期待の両面における)相互依存が衝突する極端に不確実性が高いこの環境下では、結論を急がずに忍耐強く行動することをお勧めします。

 中国が積極的にロシアの行動を止めにかかる、あるいはロシアを支援するなど、いくつかのシナリオが考えられます。幅広い可能性の組み合わせによって、さまざまな市場におけるイベントの発生時期やリスクの取り方の予想が大きく変わってくることでしょう。

 各国が行動する原動力は主に国益に基づくものです。しかし、経済規模が大きく、金融センターを抱えるような国・地域の長期的な経済・金融の相互依存の関係がいま、問われています。

 中国とその他の国の関係やその長期的な道筋が定まらない中、大きな投資判断を下す前に、この状況がどう変わっていくのか、進展を待つことが望ましいと考えています。とはいえ、株式市場と債券市場の双方において、バリュエーションの観点から見た妙味が生じつつあることも確かです。

 先ほど述べたように、中国と米国、EU、その他先進国の相互依存は経済・金融の両面でロシアの何倍もの水準に達しています。軍事的・経済的な対立が起きれば、そのコストはグローバルで壊滅的なものになるでしょう。この現実を強く認識することが、妥協点を見出し、合意を形成するための突破口になります。

 状況が落ち着き新しい世界の現実がはっきりしてくれば、ボトムアップの視点から見て企業間の差別化の要素としてのESG(環境・社会・ガバナンス)の視点や関連するビジネスモデルのサステナビリティ(持続可能性)を考慮することが重要になるでしょうし、とりわけ企業のガバナンスや経営体制への目配りがこれまで以上に重視されることでしょう。

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