ウクライナでの壊滅的な戦争は、欧州連合(EU)でのエネルギー自立の必要性を劇的に高め、EUは8日、ロシアの天然ガスに依存してきた状況から脱却する計画を発表しました。これにより、短期的には化石燃料の利用は増えるものの、長期的には再生可能エネルギーへの転換が加速すると見られます。
ウクライナでの戦争の惨状を目の当たりにし、一段と重い制裁が予想される中、欧州の各国政府は石炭火力発電所の再稼働や閉鎖の延期、他のガス供給源の確保などを通じて、ロシアの天然ガスへの依存度を下げる方法を急いで見つけようとしています。その結果、短期的には温室効果ガスの排出量とコストは増えるでしょう。
同時に、国や企業はさらなる省エネの推進や、再生可能エネルギーや原子力発電への投資といった、より低コストの代替手段を用いることで、原油や天然ガスの価格上昇による影響を軽減する方法を模索しています。
「風と太陽は誰のものでもない」――。ドイツの緑の党のメンバーでもあるロベルト・ハーベック独経済・気候保護相は最近、こう指摘しました。
国際エネルギー機関(IEA)は3月上旬 、ロシアの天然ガスへの依存度を下げる10項目のプランを発表しました。それには、ガスの調達先の変更、ガス貯蔵量の拡充、風力・太陽光発電の開発の加速、既存のバイオエネルギー・原子力発電の最大限の活用、ガスボイラーに代わるヒートポンプの普及促進などが含まれています。そして8日、EUは液化天然ガス(LNG)とエネルギー貯蔵の利用拡大、再生可能エネルギーの迅速な導入により、2030年よりも「かなり前」にエネルギー自立を達成するための計画を発表しました。
従って、長期的にはネット・ゼロ(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)に向けた構造的な動きに加え、エネルギーの自立がより重視されるようになり、エネルギーの転換が加速すると考えています。
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