ロシア依存からの脱却が再生可能エネルギーに与える影響フィデリティ・グローバル・ビュー(2/4 ページ)

» 2022年03月17日 09時00分 公開
[Jenn-Hui Tan & Matthew Jenningsフィデリティ・インターナショナル]
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短期的には排出量が増える可能性が高い

 

 EUの現在のエネルギーミックスを考慮すると、エネルギーの自立は、短期的には温室効果ガス排出量の増加につながります(チャートを参照)。EUは、天然ガスの40%をロシアに依存しています(すべてのガスの90%が輸入)。他のガス供給源への切り替えだけでは、供給不足を完全に解消することはできません。風力・太陽光の発電所の建設にも時間がかかります。そのため、他の化石燃料を検討しなければいけません。

現在のEUのエネルギーミックス

 例えばドイツは、一部の石炭火力発電所で計画していた閉鎖を遅らせ、原子力発電所の稼働を延長する可能性があると発表しています。ただし、法的・技術的な障害で実現できない可能性もあります。ドイツは福島第1原子力発電所の事故が起きた2011年に原子力発電の段階的廃止を決定し、ロシアの天然ガスへの依存度を高めました。

 一方、イタリアでは、ドラギ首相が石炭火力発電所の再開を検討すると発言し、近年減っていた国内のガス生産量を増やそうとしています。イタリア最大の電力会社であるエネルは、2027年までの石炭事業からの完全撤退という目標に沿って石炭火力発電所の閉鎖を進めており、今のところ稼働を再開する計画は明らかにしておりません。

 3月上旬、我々はエネルに対してエンゲージメント活動 を行いました。同社は短期的な不確実性を認識しながらも、脱炭素化に向けた長期的な目標に引き続き取り組んでいます。エネルはまた、2基の石炭火力発電所をガス発電所に転換する計画を変更し、再生可能エネルギーの貯蔵インフラとして再利用する可能性を検討する、と発表しました。

 欧州の電力会社はガスと再生可能エネルギーの両方の貯蔵能力を増強するとともに、北アフリカや中東からのガス調達を増やす可能性が高いと見られます。

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