2021年6月に改訂コーポレートガバナンス・コードが公表され、改訂の内容には、取締役会の機能発揮、企業の中核人材の多様性確保、サステナビリティを巡る課題への取り組みなど、ガバナンスの諸課題が含まれました。また、2022年4月より東京証券取引所において創設されるプライム市場に上場する企業に向けて、一段高いガバナンスの各項目が示されたことも、大きな注目を浴びています。
2015年6月の制定以降、これまで3年ごとにコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われ、今回の改訂は2回目となりました。この間、取締役会に占める(東証が定める独立性基準に基づく)独立社外取締役の比率は着実な改善を示していますが、特に近年はその改善幅が加速しており、日本企業のガバナンスに対する取り組みが向上している様子がうかがえます。とはいえ、独立取締役の比率は足元でも36%であり、モニタリングモデルが浸透している英米などと比較すると、見劣りします。業務執行と取締役会の一体化が常であった日本企業の長い歴史を踏まえると、独立社外取締役の比率が過半数を超える取締役会が一般的となるにはなお、一定の時間を要すると考えられます。
こうした中で当社が投資先企業にまず伝えていることは、任意の指名委員会・報酬委員会を設置することの重要性、またそれらは独立社外取締役で過半数が占められている必要があるということです。指名委員会の重要な役割として代表取締役の選解任がありますが、代表取締役は企業戦略の中心的な役割を担うことから、その選解任は企業にとって最も重要な意思決定となります。また、企業の不祥事は代表取締役への過度の権限集中から生じることが多いため、独立した指名委員会・報酬委員会を通じて取締役の選解任プロセス・報酬決定プロセスの客観性と透明性を保つことは、ガバナンスの実効性を高めるうえで非常に重要になります。
今回のコード改訂では、プライム市場の上場企業に対して独立した指名委員会・報酬委員会の設置を求めていますが、改訂の要求が明らかとなる以前から、フィデリティでは投資先企業との対話において、その必要性を伝えてきました。
2020年はこうした取り組みが進んでいない企業7社とエンゲージメントを行った結果、3社が指名委員会・報酬委員会を新たに設置することを発表し、2社は委員会の独立性向上が確認されました。
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