日常的に目にするQRコードだが、一般的なURLの読み取りや、近年広がっている決済時の利用といった使い方以外にも用途がある。
例えば、東京都交通局とデンソーウェーブが協業し、地下鉄駅のホームドアの開閉システムにQRコードを活用している。地下鉄駅では直通運転が増えており、さまざまな編成数の列車が運行しているが、ドア数や編成数の情報を記載したQRコードを列車に設置し、ホームドアに伝えることで、適切で素早い開閉につなげられる。2019年に初めて都営浅草線の一部駅で導入された他、京浜急行電鉄・神戸市交通局・小田急電鉄でも導入されている。
また、「現在は、顔の情報をQRコードに入れて顔認証システムに活用する技術を実証実験中です」と同担当者は説明する。
例えば施設に入る際には、ICカードを使うことが多い。しかし、こうしたICカード状のものは、成りすましや他人との貸し借りができてしまう問題がある。一方、顔の情報をQRコードに入れ込むことで、施設の入場などの際に正確な本人確認につながるという。この技術は、個人情報でもある“顔の情報”をサーバ上などに保管する必要がなく、個人情報保護の観点でも期待がかかるものだ。
他にも、イベントのチケットなどに活用できる、非公開の情報は特別なスキャナでないと読めないQRコード「SQRC」にも注力している。QRコードの技術を基に、デンソーウェーブではこうしたさまざまな活用方法を検討しているそうだ。
元来は、自動車の製造部品の管理のために開発されたQRコードだが、約30年後の現在、毎日どこかで見かけると言っても過言ではないほど活用されている。これほど多くの人に活用され、身近に感じられるものになるとは、開発者も想像しなかったのではないだろうか。
日本や世界を動かすほどの開発のヒントは、身近な業務の中に眠っているのかもしれない。
この企画では企業トリビアを取材します。取材テーマのリクエストや情報提供も募集中です。問い合わせフォームから、「ITmedia ビジネスオンライン」「情報提供」を選択し、お寄せ下さい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング