北海道・知床半島沖での観光船沈没事故を受け、国土交通省は5月10日、全国の船舶事業者に対し、通信設備のチェック強化などを指示した。事故を巡っては、運航事業社側の通信手段の不備に加え、国側の検査の甘さなどが浮き彫りになっており、国交省は検査体制を強化するとともに、11日にも有識者会議を開き、小型船舶の安全運航への対策を検討する。
船舶の安全確保などを定めた「船舶安全法」の規則では、通信設備について「常時通信できるもの」としている。だが、国交省の関係団体で船舶の検査業務などを手掛ける「日本小型船舶検査機構」(JCI)は、航路の一部が通信エリアでカバーされていない携帯電話を、事業者の自主申告に基づき通信設備として認めていたことが判明。事故を起こした、知床遊覧船(北海道斜里町)が所有する観光船「KAZU 1」の通信設備としていた携帯電話も、事故現場では電波が届かない状態だったことから、国の検査体制のずさんさが浮き彫りになっていた。
国の検査だけでなく、事業者側の通信環境にも不備があったことが明らかになっている。国交省によると、知床遊覧船は船との通信手段に「アマチュア無線」を使用していたとして、同社を2021年に通信手段を変更するよう行政指導していたという。同社は海上運送法に基づき国に提出した安全管理規定に「業務用無線」「衛星電話」「携帯電話」を通信手段として記載していたものの、実際の現場での運用は異なるものだった。
同社の桂田精一社長は、事故前に衛星電話や事務所の無線アンテナが故障していたことを明らかにしており、各手段に何らかの不具合があったとみられる。また、国交省によると、事故直前の検査で、同社は通信手段を衛星電話から携帯電話に変更していたが、事故当日に事故を知らせる「118番」も、船員ではなく乗客名簿に記載された人物の電話番号から発信されたものだったという。国交省はアマチュア無線の使用が常態化していた可能性や、安全管理規定に記載した通信手段が機能していなかった可能性も視野に、調査を進めている。
こうしたことから今回の通知では規則の基本原則に立ち返る。具体的には、JCIが各事業者の携帯電話の通信エリアを確認。エリアがカバーされていない場合には、常時通信可能な通信設備へ速やかに変更するよう各事業者に要請する。変更に応じない事業者には、国交省から事業者に対し、 直接変更を求めるなど、検査体制を強化する。
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