その場しのぎが相次ぐ東芝が発した断末魔 「再編案求む!」の衝撃売却・消滅も現実味を帯びてきた?(3/3 ページ)

» 2022年05月12日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]
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 この間のトップ人事に関してもその場しのぎ感はぬぐえません。まず「暫定」でスタートした綱川体制下で事業分割案が検討され、その案の是非を株主に諮る直前にトップ交代がありました。後任は島田太郎氏。新明和工業、シーメンスを経て、銀行家車谷氏に引っ張られてきた外様トップです。悪しき社風を一蹴するのに外様の起用は有効ではありますが、問題は交代のタイミングと経営課題にふさわしい人選であるか否かです。

 一部の株主からも指摘が出ているように、社運を賭けた改革案の信任を諮るタイミングでその案を検討した陣営が退任するというのは無責任ではないか、というのはごもっともです。しかも後任の島田氏は、肝心の事業分割案検討議論にほとんど関わっていない人物。会社サイドは、「リーダーの交代を求める株主の声に応えたもの」と説明していますが、これではアクティビストからの攻めを逃れるための株主総会対策のその場しのぎといわれても仕方のないトップ交代と映ってしまうわけなのです。

 そして「その場しのぎ経営」のダメを押したともいえるのが、事業分割案がしりぞけられた直後に出された冒頭の「再編案求む!」です。もはや東芝経営陣はアクティビストたちに完全に白旗を上げ、自力での企業改革を放棄し「外資の意」に委ねたともとれるこの動きに、長年わが国の発展を支えてきた名門企業にあるまじき判断として大きな落胆を感じざるを得ないところです。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 根深い悪しき企業風土を払拭(ふっしょく)できずに、「目先優先」「その場しのぎ」「忖度」「暫定」を繰り返してきたこの東芝の体たらくには目を覆いたくなるばかりです。この先東芝は一体どうなってしまうのか。今回の再編案募集のきっかけになったともとれる、米ファンドが複数のファンドと組んで東芝の買収を本格的に検討している、という報道が気になります。アクティビストたちに翻弄されつつ「買収→上場廃止→解体→売却→消滅」という末路をたどる姿が現実味を帯びてきた、と私には思えてしまうのですが……。

著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)

株式会社スタジオ02 代表取締役

横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。


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