民間企業も他人事ではない 大不調の日ハム・阪神から学ぶ「トップ人事」の重要性東芝・みずほFGでも不可解なトップ人事が(1/3 ページ)

» 2022年04月21日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 いきなり下世話な話で恐縮ですが、プロ野球界で奇抜な言動を通して注目を集めているのが、北海道日本ハムファイターズの監督である“BIGBOSS”こと新庄剛志氏です。彼の前任は、10年にわたり同チームの監督を務めた栗山英樹氏です。栗山氏は教職免許を持つ理論派の教育者的たたずまいの指導者で、大谷翔平選手を育てたこともあり、チームは教育的でおとなしいムードが漂っていました。

 新庄氏が後任の座につくと、チームのムードは一変。自らBIGBOSSと名乗り明るく行動的で元気な姿は確実にチームに浸透し、試合中も明るいムードにあふれているように感じられます。しかし同時に気になったのは、彼が時に放つショッキングな言葉の数々です。

 「優勝なんて目指しません」「開幕3連戦は遊びます」「今年1年はチームそのものがトライアウト」――。本人の真意はともかく、チームは明るくなったもののこれらの言葉は、選手たちの勝利に対する執念を削いでしまっているように思います。実際、チームは開幕から絶不調。リーダーの発言がチームの士気に、少なからず影響を与えたのではと感じさせられます。

出所:北海道日本ハムファイターズ公式Webサイト

 ついでに監督の話題をもう一つ。阪神タイガースの矢野燿大監督です。2021年シーズンは終盤まで優勝争いを演じ、優勝した東京ヤクルトスワローズとは勝率でわずか5厘差の2位という好成績を残しました。ところが今季は、開幕からいきなり10連敗する最悪のスタートに。シーズン前に監督が「今年限りで退任」との発言をしたのですが、球界OBなどの評論家筋からはそれが選手のモチベーションやチームのムードに影響したとの声が聞こえています。

 企業においては毎年3〜4月にかけて年度替わりとなるこの時期は、トップの交代人事が数多く発表されるタイミングです。トップの交代記事というものは、よほどの大企業か注目企業でない限り、ベタ記事レベルで新トップの経歴を中心に報道されるのが常です。これはトップ交代を告げる企業のニュースリリースのレベルによるものですが、トップ人事はプロ野球だけでなく企業にとってもこの先を予見するための戦略転換に匹敵する重要な出来事であり、不透明感が漂う今の時代、このような儀礼的な扱いで良いわけはないと思うところです。

 プロ野球チーム同様に組織におけるトップの交代やエポックメイキングな言動はムードを一変させるものであり、その一挙手一投足は組織に所属するメンバー一人ひとりの行動や考え方に大きな影響を及ぼすものです。筆者も組織のことなど何も知らない新人銀行員のころに、支店長が交代するとこんなにも店の雰囲気が変わるものなのかと驚いたものです。

 規模によってムード転換の浸透速度に違いはあるものの、トップが交代すれば組織は新しいトップの色に染まり、その言動によって組織は良くも悪くもなります。特に激動の時代である今は組織の大小を問わずトップ交代が組織運営に与える影響は大きく、従ってその交代は基本戦略変更と同様の重要さを持っていると思っています。

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