民間企業も他人事ではない 大不調の日ハム・阪神から学ぶ「トップ人事」の重要性東芝・みずほFGでも不可解なトップ人事が(2/3 ページ)

» 2022年04月21日 05時00分 公開
[大関暁夫ITmedia]

 筆者がトップ交代に求められるものと考えている一つが、情報開示です。上場企業でトップが交代する際に、なぜこの時期の交代なのか、その交代がどのような戦略にどのように資するものなのか、また具体的に新たなトップの何を評価してどのような議論を経て後任に選出されたのか、といったことを詳細に開示する義務付けが必要であるように思うのです。

 現実に、著名企業において株主から見て不可解と思われるようなトップ交代は意外に多いものです。具体例を挙げるなら、一つは東芝における事例です。アクティビスト(いわゆる“モノ言う株主”)からの強い経営改革要求の中で、会社側の事業分割方針について株主の賛否を問う重大局面を前に、なぜかその分割議論に関与していない後任を据えるトップ人事でした。実に不可解であり、アクティビストからも強い反発を買うことになりました。

 後任の島田太郎社長は、現在の混乱の根源をつくって実質引責辞任した車谷暢昭元社長が招いた社歴の短い外様役員です。独シーメンス社など外資系企業勤務の経歴が長く、本人の口から「東芝でデジタルが分かる最初の社長」との自己紹介的な言葉はあったものの、東芝が置かれた状況を考えるなら、選出した指名委員会から交代タイミングについての説明や人選理由、氏のキャリアにおけるどの部分をもって何を期待したのかについて、具体的かつ詳細な説明があってしかるべきかと思います。

みずほでも不可解なトップ交代劇

 みずほフィナンシャルグループでも不可解なトップ人事がありました。大きなトラブルを経て新システムに移行したにもかかわらず相次ぐシステム障害が発生し、トップ交代に追い込まれた同社。トラブルが起きた原因の究明を目的とした金融庁の特別検査でその組織風土の問題に言及されるという異例の事態にありながら、組織風土の根源ともいえる旧3行のバランス意識にメスを入れたとはおよそ思えないトップ交代人事には首をかしげたくなります。

 グループのトップに位置する同社の社長に、前任の坂井辰史氏と同じ、旧日本興業銀行出身の木原正裕氏が就任。木原新社長はシステム問題とも直結するグループ最重要部門であるはずのリテール業務経験がないという、この上なく不可思議な人選に思えました。かつ、会長に旧第一勧業銀行出身の今井誠司氏、銀行頭取に旧富士銀行の加藤勝彦氏を配するという、旧3行バランスから抜け出せないトップ人事に収まったのです。

 これが社外取締役で構成される指名委員会が選出した人選だというので、二度驚きました。調べてみると、指名委員会委員長の甲斐中辰夫氏、取締役会議長で指名委員の小林いずみ氏は、ともに今回引責辞任する坂井社長を2018年に選出した際の指名委員でもあります。前回の人選後にその体制下で社会問題化した大トラブルを起こして監督官庁から組織風土の改善を求められていながら、再びリテール業務に疎遠な旧興銀出身者をグループトップに選んでしまうことに問題を感じなかったのだとすれば、彼らこそ指名委員に不適ではないのかとすら思えるところです。

 固有の委員の資質に関する問題点は置くとしても、そもそも社外取締役で構成される指名委員会に、先にも申し上げたように戦略同様企業の浮沈のカギを握るといっても過言ではないトップの人選を一任していいのか、という疑問は強く感じるところです。

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