そこでこのような制度を日本でも導入して義務にすれば、これまで経営者から言われるままに働いてきた中小企業の労働者も、賃上げや待遇改善を直接訴えることができるのではないかというわけだ。
確かにその通りだと思う一方で、筆者はこれを導入したところで、その効果は限定的になってしまうのではないかと危惧している。確かに、日本企業の99.7%は中小企業なので、普通に考えたら「従業員代表制」を法制化すれば、賃上げに結びつくような気もするが、問題はこの中小企業の6割が、「小規模事業者」ということだ。
小規模事業者の定義をみると、「製造業その他」の場合は従業員20人以下で、「商業・サービス業」の場合は同5人以下である。つまり、いわゆる社長とその家族が経営しているところに、社員が数名という零細企業である。
想像していただきたい。いくら「従業員代表制」が法制化されたといっても、このような規模の会社で従業員が経営者に対して、「値上げラッシュで生活が厳しいので給料もあげてください」などと交渉ができるだろうか。
できるわけがない。「ウチも大変だから今は我慢してくれ」の一言で終わりだ。今も日本企業の6割が、このようなやりとりをしているはずだ。
では、どうするのかというと、政治の力で賃上げを進めていくしかない。これまで中小企業に賃上げのためにバラまいた補助金も結局、会社の資金繰りなどまわされて、労働者には還元されていない。会社の自発的な賃上げを待っていたら、100年経っても「安いニッポン」から脱却できない。
そういう政治の力による賃金引き上げを断行していく際に重要なのは「公正さ」である。
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