ワークマンの靴専門店、業界一強「ABCマート」の牙城を崩せるか磯部孝のアパレル最前線(3/5 ページ)

» 2022年05月24日 06時30分 公開
[磯部孝ITmedia]

「同じ土俵にいる有力専門店はありません」

 さて、NB信望の強いシューズ業界において、ワークマンは、安心して履けるブランドとしての支持を集められるか。今までワークマンのシューズを購入した人達は、同社が提供する品質と価格に新たな価値観を見いだした人や、既存のNBブランドにこだわらない人。あるいは普段履きとよそ行きのシューズを分けて購入する人達だろう。

 ワークマンシューズでは、フォーマルシューズは扱わず、カジュアル、スポーツ、アウトドアに絞り込んだ品ぞろえで展開している。

 なんばCITY店でプッシュしている商品は、女性用の「アクティブパンプス」(2480円)。店舗の正面に#ワークマン女子があることから、同店の売り上げの2割はパンプスが占めると予想している。女性用ウェアの購入客からコーディネート可能なパンプスを求める声が多かったことが開発のきっかけだという。売り場には女性用のタウンウェアを並べ、コーディネートも提案している。

ワークマン アクティブパンプス(撮影:ほしのあずさ)

 同社は、ワークマンシューズの出店を発表したプレスリリースで、「当社の一般靴はPB主体/高機能/低価格が特徴で、同じ土俵にいる有力専門店はありません」と強みを説明。その上で、「女性用の機能性ウェアよりも競合が少ないブルーオーシャン市場」だとしている。

 100%PBによる品ぞろえを目指すワークマンシューズは、さまざまなブランドの商品を集めた店舗ではなく、大手ブランドのシューズ専門店と近い店舗だ。ドレスシューズ専門店などはあるが、単一ブランドのスニーカーのみを扱う専門店は極めて少ない。

 その理由は、「シューズ」だけでブランドの世界観を表現する難しさと、来店頻度が多く見込めないことが要因だろう。大手スポーツブランドも、ウェアと合わせたトータルコーディネートの提案がほとんど。ユニクロも、09年に靴事業「ユニクロシューズ」を発表し、10年からは靴専門店「キャンディッシュ」に継承していたが、11年8月までに全てクローズしている。その後のシューズ販売は、ユニクロ店舗内で展開している形だ。

 シューズ専門店に行く動機は、特定のファンを除いて明確に「○○用の靴を買う」といった目的をもって訪れる場面が多い。ウェアに比べ「ふらっと立ち寄って買う」といった衝動買いは少なく、来店頻度も多くは見込めない。その辺りに単一ブランドによるシューズ専門店の運営の難しさがあるのではないかと思う。

 なんばCITY店のように、ウェアとシューズ専門店が併設する形であれば同時購入も可能だ。ただ単独店として展開を始めた場合はどうだろうか。シューズの複数買いは考えにくく、専門店として、ワークマンのブランド力と、高機能、低価格を武器に生活者の支持を集め、客単価や客数を確保できるのかが試される。

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