楽天モバイルはなぜ「0円廃止」に追い込まれたのか?房野麻子の「モバイルチェック」(3/3 ページ)

» 2022年05月24日 07時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

大手キャリアの大幅値下げという想定外

 楽天もモバイルのユーザーを増やして楽天経済圏に取り込む戦略は、新規参入だったがゆえに、さまざまな想定外が起き、計画通りに進まなかった節がある。

 当初、MNOの楽天モバイルは19年10月のサービス開始を予定していたが、基地局の整備が追いつかず、5000人のユーザーに限定した「無料サポータープログラム」という、実証実験の延長のような形で始まった。当初は、基地局建設がそこまで難しいと予想していなかったのではないか。

 また、4G用に割り当てられた周波数が1.7GHz帯の1波だけではエリア構築が難しいのではないかと指摘されたとき、当時の山田善久社長は「(1.7GHz帯は)結構つながる」と回答し、大きな問題はないという考えを示していた。それが、エリア拡大に苦慮することになってからは、プラチナバンドを要求している。

 菅義偉前総理大臣と武田良太前総務大臣の、大手MNOメインブランドでの値下げ要請も大きな想定外だっただろう。各社が楽天モバイルと同じ価格レベルのオンライン専用ブランドを提供し始め、エリアは狭くとも圧倒的に低料金という楽天モバイルの魅力が低下してしまうことになった。そこで、0円で提供する予定はなかったのに、無理をして0円からのプラン、UN-LIMIT VIを導入したように今では思える。

 エリア構築のコストがかさみ、赤字も想定以上に大きくなっているはずだ。楽天モバイルは23年に単月黒字化を目指しているが、それを達成するためには、0円プランを続けていく余裕がなくなったと見られる。

 なお、0円を廃止するにあたって、「電気通信事業法に抵触するおそれがあった」という楽天側のコメントがあるが、これは0円有りのプランと無しのプランを「並行して」提供することが問題だと楽天自身が判断したからで、0円から始まるプラン自体が問題なのではない(実際、KDDIはpovo2.0で0円からのプランを続ける)。「0円でずっと使われても困る」という三木谷氏の発言こそ、まさしく正直な本音であると思われる。

筆者プロフィール:房野麻子

大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.