“消毒液をまいておけ”―「送料無料」が招くドライバー軽視の風潮カスハラにつながる恐れ(2/2 ページ)

» 2022年05月26日 06時00分 公開
[濱川太一ITmedia]
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ドライバーに消毒液を噴射

 実際に、コロナ禍ではトラック運輸従事者への中傷や、理不尽な対応が相次いだ。

 愛媛県新居浜市の市立小学校では、ドライバーの子どもに小学校の入学式出席を見合わせるよう要請があった事例が発覚した。

 ドライバーが配達先の利用者からアルコール消毒スプレーを噴霧されたり、利用者に荷物を引き渡して玄関ドアを閉めた後に、「消毒液をまいておけ」といった声がドアの向こうから聞こえてきたりした例など、悪質な言動や配慮を欠いた対応が多く報告された。

コロナ禍に見られたトラック輸送従事者へのカスハラ事例(運輸労連の資料より)

 国交省によると、国内貨物の年間総輸送量(トンキロベース)は近年、40億トンキロ台前半で推移している。このうち、最大となる5割の輸送をトラックが担っている。

 トラックは人々の生活に関わるあらゆるものを運ぶ。米や小麦といった農産物から、鉱物資源、原油、建設資材――。これらを工場に運んだ後、加工された製品を再びトラックで運んでスーパーなどに届ける。

国内貨物の総輸送量の5割をトラックが担う(国交省の資料より)

 こうした物流がストップすると、人々の生活は立ち行かない。社会機能の維持に不可欠な業務でありながら、その重要性が世間に浸透していないのが現状だ。

 福本さんは「まずはトラック輸送の役割・重要性を認識してもらうことが第一歩だ」と話す。そのためにも、「送料無料」の表示見直しは喫緊の課題だと位置づけている。

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