そもそも“好きな仕事探しシンドローム”が広がった要因の1つは、村上龍氏の『13歳のハローワーク』(2003年)が、全国8000校以上の小・中・高等学校で教材や参考図書として採用されたことの影響が大きいと、個人的には考えています。
当時、全国の小・中・高等学校で活発に進められていた「キャリア教育」で、514もの職種が紹介されているこの本は便利だったし、子どもたちに対して、「仕事=ワクワクするもの」と興味を抱かせる内容でした。これ自体はすばらしいことです。私自身、「子どもの時に読みたかった」と率直に思いました。
しかし、村上氏は本の冒頭で、「この世の中には2種類の人間・大人しかいないと思います。生き生きと充実感を得ながら仕事をやっている人と、そうではない人の2種類」と断言し、「好きなことを仕事にすればいい。だって嫌いなことだったら長続きしない」と説いている。「好きな仕事圧」です。
4月に公開された連合の調査「入社前後のトラブルに関する調査2022」でも、新卒入社をした企業を5年以内に退職した理由のトップは「仕事が自分に合わない」(40.1%)でした。
2位の「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」(31.0%)や、3位の「賃金の条件がよくなかった」(27.4%)を約10ポイント上回り、圧勝でした。
つまり、“好きな仕事探し=自分に合った仕事探しシンドローム”は、今も続いている。いや、正確には、根を下ろした。就職する=好きな仕事をするという方程式は、当たり前の価値観として定着したのです。
一方で、同調査では興味深い事実も確認されています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング