ビルから列車を眺める“だけ” 応募が殺到する私鉄協会のイベント、開催の狙いは?立地を生かしたユニークな取り組み

» 2022年06月01日 18時00分 公開
[ITmedia]

 ビルから列車を眺める“だけ”――。関東の私鉄各社でつくる団体が主催するユニークなイベントに応募が殺到し、参加受付を一晩で締め切るほどの人気となっている。ビルの会議室から列車が行き交うのをひたすら眺める催しだというが、開催の狙いは何なのか。イベントの魅力とあわせて担当者に聞いた。

協会が入るビル16階から眺める列車の走行風景(提供:関東鉄道協会、以下同)

 「ビルの真上から列車を眺めると、普段は気づかない『おやっ』と思う楽しみがたくさんあります」

 こう話すのは、関東鉄道協会広報部の大津勝巳さんだ。

 協会は、東急や東武、西武鉄道など関東の私鉄43社で構成。私鉄の利用促進を通じて、地方民営鉄道の維持や沿線地域の活性化を図ることなどを目的に、1947年に設立。イベントの開催やTwitterなどを使った観光情報の発信に力を入れている。

どんなイベント?

 東京・大手町の協会が入るビルはJRの線路に隣接し、16階にある協会の会議室は、列車が行き交う様子を真上から眺められる格好のスポットだという。

 「私鉄協会のイベントですが見てもらうのはJRの列車。と、そこは矛盾がありますが……」と大津さんは苦笑するが、鉄道ファンにとってはどちらでも楽しい。

 6月11日に開催を予定するこのイベントは、21年3月末に実施し好評を博したことから、今回3回目の実施となる。多数の応募が予想されたため抽選制とし、5月25日に協会公式WebサイトやSNSでイベント概要を周知。同30日午前11時から募集を始めたところ、一晩で多数の応募が集まり、翌31日午前11時に募集を締め切った。

 「反響は想定内です。これ以上受け付けても落選者が増えてがっかりさせてしまうので、早めに募集を締め切りました」(大津さん)

 会場となる協会会議室には、2メートル四方の窓が6枚ある。午前10時〜午後5時45分までの45分交代制で計8枠の時間を設定。1枠あたり6組(1組4人まで)を募集した。

イベント会場となる協会の会議室

 応募する層は、鉄道好きの子どもがいる家族連れが多いほか、親子3世代で訪れる参加者もいるといい、幅広い年齢層が関心を寄せていることがうかがえる。

鉄道模型を眺めるような面白さ

 ビルの会議室から列車を眺める魅力は何だろうか。

 大津さんは「北陸・上越新幹線の車両(E7系・W7系)には、屋根に号車番号が書かれていたり、山手線の一部の編成には、屋根に架線の様子を監視するためのカメラやライトなどの装置が付いていたりします」と話す。列車を正面から見るだけでは気づくことができない特徴がたくさんあるという。

列車の屋根部の付属物など普段は目が届かない特徴が楽しめる

 また、ラッシュアワーの時間帯は列車が次々と走行する迫力ある景色も楽しめるという。16階から眺めることで「目線的には鉄道模型を眺めているような気分が味わえる」と大津さんは話す。

 協会は6月末で紀尾井町へと移転することが決まっており、ビルから列車を眺めるイベントはこれが最後となる。大津さんは「引き続き鉄道の魅力を伝えるイベントを展開していきたい」としている。

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