新幹線に乗る楽しみといえば、あのスピード感に、駅弁、カチカチに冷えたアイスクリーム――とたくさんあるが、中でも「車窓から眺める富士山」は、必須ではないだろうか。JR東海は5月27日、東海道新幹線の最新車両「N700S」を2023〜26年度にかけて、追加で19編成投入すると発表した。追加投入にあたり、車内スペースを一部改良。多目的室の窓の高さを変更し、車いす利用者がより景色を楽しめるようにする。これまでは富士山の山頂が欠けて見えなかったが、改良後は山頂部まで全体がきれいに見渡せるようになるという。改良の狙いを担当者に聞いた。
「車いすで新幹線を利用するお客さまがさらに快適に過ごせるよう、障害者団体などとバリアフリーに関する車内設備について議論を続けてきました」
こう話すのは、JR東海広報部の門山駿一郎さんだ。
N700Sは20年7月にデビューした同社の最新車両。“S”は“Supreme”(最上の意)の頭文字で、「N700シリーズ中、最高の新幹線車両」を意味する。車体の揺れを大幅に抑える「フルアクティブ制振制御装置」を採用し、主力のN700Aに比べ、より高い乗り心地を実現している。
N700Sでは、21年4月以降導入の車両について、車いすスペースを6席設けるなど、車内のバリアフリー化を進めてきた。今回の追加投入を機に、障害者団体から寄せられていた2つの要望について、「実現可能性のめどが立った」と門山さんは話す。
その改良の1つが、多目的室の窓の高さの変更だ。
新幹線には多目的室を備えており、東海道新幹線の場合は11号車に設置している。車いす利用者など体に不自由のある人に優先して提供しているほか、体調を崩した時や、授乳スペースなどとしても利用できる。
障害者団体との意見交換で挙がった要望の1つが「車いすのままでも景色を楽しみたい」という声だった。車いすは座面が高く、従来の車窓だと目線より上の景色がせまくて見えづらい。
要望を受け、同社は実物大の図面などを使って車内の状況を模擬しながら、改良を検討。
その結果、窓の高さを約5センチメートル、横に約30センチメートル変更することにした。これで目線より上が広くなり、より遠くを望めるようになる。従来は富士山の山頂部が欠けて見えなかったが、改良により、山頂も含めた全体が見渡せるようになる。
さらに、車両の窓側の車いすスペースのコンセント位置も変更。従来は足元にあったコンセントを、より使いやすいように、高さを約55センチメートル変更する。
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