新幹線から富士山見やすく――JR東海、車内スペースを改良 狙いは?令和版「マウント富士計画」?(2/2 ページ)

» 2022年05月31日 06時00分 公開
[濱川太一ITmedia]
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令和版「マウント富士計画」の再来?

 車窓の位置の見直しで、富士山の眺めをより良くさせる今回の改良。SNSでは「令和版マウント富士計画」などと評する声が挙がっている。

 マウント富士計画とは何か――。それは「富士山」を眺めながら食事を楽しんでもらうための計画だ。

 1964年、東海道新幹線の東京〜新大阪間が開業した。72年には山陽新幹線が新大阪〜岡山間、75年には博多まで伸びる中、当時の国鉄は食事への需要が高まると想定。74年以降「食堂車」を導入していった。

 当時、食堂車には山側に通路があり、通路と食事スペースの間に壁があったため、富士山を眺めることができなかったという。

多目的室の改良に「令和版マウント富士計画」と評する声も

 「富士山を眺めながら食事をしたい」という乗客の要望を受け、国鉄は79年、山側に窓を設置する工事を実施した。これが通称「マウント富士計画」だ。

 その後、新幹線の高速化などに伴う利用者減で、食堂車は2000年3月のダイヤ改正で姿を消した。

 JR東海広報の門山さんは、SNSでマウント富士計画が言及されていることに対し、「今となっては計画についてもともと知らない社員も多い」と話す。

「新幹線から富士山」は特別?

 「新幹線から富士山を楽しみたい」という思いは、食堂車が廃止された今も変わらない。動画投稿サイトには、新幹線から富士山を楽しめる絶景ポイントを紹介する動画が数多く投稿されている。中には、外国人観光客の投稿も多く、富士山に胸打たれるのは日本人だけではないようだ。

 このほか、新幹線の座席予約についても、富士山が望める窓側から予約が埋まる傾向があるという。

「新幹線から富士山を楽しみたい」という乗客の思いは今も昔も変わらない

 さらに、JR東海では「天気が良く、富士山が車窓からきれいにご覧いただける際には、乗務員の判断により、車内放送でご案内をさせていただいております」(門山さん)としており、同社としても、車窓から望む富士山を乗客に楽しんでもらう大切な要素として捉えている様子がうかがえる。

 同社は今回の改良に約1140億円を投じる。車両スペースの改良と合わせ、廃車になる車体のアルミ部材を車体の屋根部に再利用するなど、環境負荷の低減も図る。

 最新技術で最良の乗り心地を実現し、さらに「富士山が眺めやすい」というきめ細やかな快適さまで追求したN700S。まさしく「N700シリーズ中、最高の新幹線車両」といえそうだ。

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