2022年後半のドル円相場を展望する市川レポート 経済・相場のここに注目

» 2022年06月24日 07時00分 公開
[市川雅浩三井住友DSアセットマネジメント]
三井住友DSアセットマネジメント

直近の米CPIとFOMCを受け、ドル円の見通しをドル高・円安方向に修正、年末は136円を予想

 6月10日に発表された5月の米消費者物価指数(CPI)では、市場予想を上回る物価の伸びが確認され、また、6月14日、15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、大幅利上げによるインフレ抑制姿勢が明示され、多少の景気減速は止むを得ないとの考えが示唆されました。これを受け、三井住友DSアセットマネジメントでは6月20日、ドル円相場の見通しを、ドル高・円安方向に修正しました。

 これまで、年内の予想レンジは1ドル=125円〜137円、年末着地は131円としていましたが、今回、年内の予想レンジは1ドル=130円〜142円、年末着地は136円に設定しました(図表1)。前述の通り、米金融当局がインフレ抑制に本腰を入れたことで、市場で大幅な連続利上げが織り込まれた一方、日銀は金融緩和の維持に強い姿勢を示しているため、もう一段、ドル高・円安が進む余地は拡大したとみています。

更なる利上げの織り込みなら一段の大幅なドル高・円安、日米金融政策に変化の兆しなら反転

 なお、米利上げの時期と幅について、三井住友DSアセットマネジメントは7月に0.75%、9月に0.50%、11月と12月に各0.25%、来年3月に0.25%、を想定しています。ドル円が予想レンジの上限に近づく1つのシナリオとしては、市場が弊社想定以上の利上げを織り込み、米長期金利が上昇する展開が考えられます。弊社は米10年国債利回りの年内予想レンジは3.00%〜4.00%、年末着地は3.50%とみていますので、具体的には4.00%に近づく場合ということになります。

 これに対し、ドル円が予想レンジの下限に近づく1つのシナリオとしては、日米の金融政策に変化が生じる展開が考えられます。米国については、市場で早期大幅利上げの織り込みが一巡し、利下げが意識されるケースです。日本については、2023年4月の黒田日銀総裁の任期満了が近づくにつれ、政策変更の思惑が強まるケースです。いずれも実際に発生すれば、日米金利差拡大を背景とするドル高・円安の流れは反転しやすくなります。

弊社はドル円について、この先緩やかにドル高・円安が進んだ後、ドル高値圏での揉み合いとみる

 米国の景気はこの先、大幅利上げによって減速が見込まれ、人手不足などの供給制約が徐々に解消されることで、インフレはいくらか落ち着くと予想しています。また、足元のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、来年夏ごろの利下げが想定され始めており、大幅なドル高・円安の進行は一服する可能性も高まりつつあります。弊社は、もう一段、緩やかにドル高・円安が進んだ後、ドル円はドル高値圏で揉み合うと考えています。

 なお、ドル円はここ3カ月ほどで20円超、ドル高・円安が進行しました。現在のドル円の実勢レートは購買力平価を踏まえると、ドル高・円安方向にオーバーシュートして(行き過ぎて)います(図表2)。購買力平価では、物価の高い国の通貨は減価するため、現状の日米物価格差が続いた場合、ドル円は長期的にはゆっくりとドル安・円高地合いに戻るという動きが想定されます。

市川 雅浩(いちかわまさひろ) 三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。

現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。

著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。

CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。


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