130円台まで円安加速 通貨防衛はもはや”無理ゲー”?金融ディスラプション

» 2022年04月28日 19時20分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 4月28日のドル円相場は、1ドル130円台まで下落し、20年ぶりの円安水準を更新した。きっかけとなったのは日銀だ。今回の金融政策決定会合の結果を公表し、「いまの大規模な金融緩和策を維持」としたからだ。

 これが正午に報道で伝えられると、それまで128円60銭前後で推移していたドル円相場は急速に下落。瞬間的に129円40銭まで、1円近く落ち込んだ。その後も円安傾向は続き、午後6時には130円90銭と、131円台をうかがうところまで進んだ。

日銀の発表を受けて、1日で2円以上円安が進んだ(TradingView)

 そもそも今回の円安は、米国をはじめとした海外主要国が利上げを行い金融引締を行う一方、日本では緩和的な金融政策が続けられているためだ(記事参照)。円安が進行する中で、日銀があらためて「大規模金融緩和を維持」とアナウンスしたことで、さらに円安が加速した。

世界各国の主要通貨に対して、円は大幅に下落している

通貨防衛策が取れない政府日銀

 政府は円安に対してどんなスタンスを取っているのか。通常、通貨安に見舞われた国は、景気には逆風となるが利上げを行うとともに、財政健全化案などを提示して、自国通貨の信任回復を目指す。

 ところが、今の日本では利上げどころか大規模緩和の継続が示された。さらに長期金利の上昇を抑える姿勢を鮮明にしている。また岸田文雄政権は、参院選を前に、財政出動による景気対策を実施する構えだ。このように、「悪い円安は問題」といった口先介入は繰り返されているものの、実質的には通貨防衛策とは真逆の取り組みがなされている。

 三井住友DSアセットマネジメントは4月28日のレポートにおいて、「通貨防衛は”無理ゲー”」だという表現で、現在の日本が置かれた状況を表した。難しすぎるゲームのように、解決困難な課題のことを”無理ゲー”と呼ぶが、「今の政府日銀にとっての円安阻止は、まさに”無理ゲー”といってよい状況」(同レポート)。

 こうした背景から、三井住友DSアセットマネジメントは2022年のドル円相場について、1ドル134円程度を上限と見ている。さらに、資源高と円安の相乗効果で大幅な貿易赤字が継続するようだと、「想定外の円安が進んでしまうリスクシナリオを意識せざるを得ない」とした。

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