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「出社=昭和」「在宅=革新的」って本当? NTTとホンダの経営哲学河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2022年06月24日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 一方、真逆路線をいち早く選択したのが、本田技研工業(ホンダ)です。

ホンダ(提供:ゲッティイメージズ)

 ホンダとして本来目指していた働き方を通じて変革期を勝ち抜くために、『三現主義で物事の本質を考え、さらなる進化をうみ出すための出社・対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます。

 22年4月、国内営業部門の従業員向けに以上のようなメールを送付し、5月上旬には国内全社を対象に「原則出社」とする方針を通達したと報じられました。

 育児や介護などで必要な場合は引き続き在宅勤務を活用できるほか、各職場の状況に応じて段階的に運用を切り替えてもらうとのこと。つまり、ホンダであるために「原点に戻ろう!」ということなのでしょう。

会社の“存在意義”が問われる時代

 私はコロナ禍で繰り返し、「今ほど会社の存在意義が問われている時代はない」と発信してきました。「わが社」が大切にすべき有形無形の“道具”に、今こそ向き合う必要がある、と。

 ホンダにとって、「三現主義=現場、現実、現物を重視する姿勢」は、無形の大切にすべき道具。創業者の本田宗一郎は、現場を何よりも大切にし、現場で現物を観察し、現実を認識したうえで問題解決を図ってきました。

 その本田宗一郎が、39歳のときに「人間休業宣言」をしたことはあまりに有名です。「遊んで暮らすなんて、本田宗一郎は終わった」という世間の批判も気にせず、戦後の焼け野原で暮らす人々=現場」を本田宗一郎は、歩いて回ります。そこでひらめいたのが、「自転車にエンジンをつけたら人々の暮らしが便利になるのではないか?」という発想です。その後、世界をせっかんしたスーパー・カブが生まれました。

 「三現主義」とは、企業も、働く人も、お客さんもニコニコの三方良しを実現するための手段であり、創業者の経営哲学なのです。

 電気自動車大手テスラ社のCEOイーロン・マスク氏が、従業員にメールで「週40時間出社しないならクビ」と伝えたことが話題になりましたが、これも経営哲学だと私は理解しています。

 「管理職ほどオフィスに姿を見せることが重要だ。自分もテスラが増産しようとしていた時期には工場に住んでいた」というマスク氏の発言や、Twitterの社員への演説で、人員削減の可能性や、リモートワークは「特別な従業員」にのみ許可すると述べたのも経営哲学です。

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