スシローは「おとり広告」問題の本質を理解しているか おわび文書に“違和感”を覚えたワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2022年06月25日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

おとり広告と認定された3品

 スシローが「おとり広告」を行ったと認定されたのは、次の3品だ。

 1つ目は、21年9月8〜20日に実施したキャンペーン「世界のうまいもん祭」で提供した19品のうちの「新物!濃厚うに包み」(110円)。

 通常、スシローに行くと、うに(生うに)は330円の黒い皿で提供されている。それが3分の1である、黄色い皿で110円という特価で販売されるのだから、わざわざ遠いところから家族総出で繰り出したケースもあっただろう。

濃厚うに包み。おとり広告の対象となった(出所:プレスリリース)
生うには普段黒い300円皿で提供される

 店に到着して、「うには売り切れていました」と店員に言われた時の“がっかり感”はとても大きいものだったと想像される。筆者自身は、うににそこまでの執着はない。スシローは旬のネタをそろえたフェアー商品が豊富なので、他に面白い商品があればそれを食べようと切り替える。しかし、全員がそう割り切れるわけではない。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。

濃厚うに包みが100円皿で提供された、世界のうまいもん祭(出所:プレスリリース)

 2つ目は、同年9月8日〜10月3日のキャンペーン商品、「匠の一皿 独創/とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」(528円)。こちらも、うにである。

新物うに 鮨し人流3種盛り。おとり広告の対象となった(出所:プレスリリース)

 3つ目は、同年11月26日〜12月12日に実施したキャンペーン「冬の大感謝祭 冬のうまいもん」で提供した9品のうち「冬の味覚!豪華かにづくし」(858円)。

豪華かにづくし。おとり広告の対象になった(出所:あきんどスシロー公式Webサイト)

 6月17日、同社の親会社であるFOOD&LIFE COMPANIESは「一部報道に関するお知らせ」というニュースレターを発行した。そこには、「報道の中で『詐欺』という表現や『過去からも意図的に繰り返し行ってきたのでは?』とご指摘をいただくことに、従業員一同大変心を痛めている一方で、今回の件の事の重大さを改めて痛感し、猛省しております」と書かれてあった。

 また、「現在も、大変多くのお客様からお問い合わせや、がんばれといった応援のご連絡をいただいており、この度交付された措置命令の重大さを改めて実感しております」ともあった。

 総じて文面から伝わるのは次のようなことだ。社内では、売り切れ御免の態度に対して、一般のユーザーの反応は温かくて励みになる。一方、報道は冷たくて傷つくものだと受け止めている。報道は消費者庁の発表をもとに、時には被害を受けた消費者の声を代弁するために、法的措置について取り上げるので、スシローから見れば言い過ぎと思われる厳しい表現になりがちだ。

 報道がおとり広告について厳しく取り上げた後も、スシローの店舗は相変わらずにぎわっているようだ。ニュースレターからは顧客から支持されているという自信も垣間見られる。うにやかににさほどの思い入れのないユーザーにすれば、スシローは依然、安価で満足度の高い寿司を提供してくれるチェーンだ。私の知人にも「スシローは最近、混み過ぎていた。人気が落ちて空いているなら行ってみたい」と言っている人もいたほどだ。

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