このように見ていくと、いよいよ掛け金が小さい代わりに保険金額も安い「ワンコイン保険」や「ミニ保険」に加入する意味はないということになる。
なぜなら、保険金額が非常に安いミニ保険の場合は、純粋に貯蓄した方が「早く保険金額相当の金銭を用意できる」し、「そのお金をさまざまなリスクの備えに使える」からだ。
一般にミニ保険の類は「掛け捨て型」と呼ばれ、一定期間内に保険事故が発生しなかった場合、その保険料は戻ってこないケースがほとんどである。つまり、コロナ感染に備えたミニ保険に加入して、保障の対象外となる要因で入院した場合、掛け金が無駄になるだけではなく、入院費用について別途工面しなければならない。
一方で、入院に備えた「貯金」であれば、コロナで入院しても、風邪をひいて入院しても、その貯金を充てれば良いし、入院しなかった場合は別の用途に貯金を使えばいい。
冒頭のコロナ助け合い保険では、30歳から34歳の女性が最も保険料が高い月額960円であった。保険金額が1万円であるとすると、11カ月以内にコロナに感染し、自宅療養ないしは入院にならなければ加入者は損してしまうことになる。
11カ月以内にコロナに感染するような環境に身を置いていなければ、ミニ保険に加入せずに、毎月同じ額だけ貯蓄しておくことが合理的だろう。
ちなみに、「ミニ保険」のようなものはショッピングの場面でもたびたび目にする。
商品の購入代金に上乗せして一定額を支払ったり、月額数百円を支払うことで故障時は新品に交換してくれたり、修理が無料になるようなプランを目にしたことはないだろうか。これも、ショップ側としてはその保険的なプランを用意することで利益率を向上させているわけであるから、利用側の期待値としてはマイナスとなる。
人生には数多のリスクがつきものだ。仮にそのリスク全てを保険で賄おうとすれば、たちまち月収の何倍もの保険料を支払わなければならなくなる。
重要なのはリスクの優先順位を見逃さないことだ。人生が激変してしまうかという点と、それについて貯蓄では到底賄えないレベルの十分な保険金を受け取れるかを基準に、保険と向き合うべきだろう。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら
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