実は米国では導入済みの”内部留保課税”、ただし実現すれば失業大国にも?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)

» 2022年06月03日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

 5月31日に、日本共産党委員長の志位和夫氏が自身のSNSで大企業への内部留保課税を「真剣に検討すべき」としたつぶやきが話題となった。

 内部留保課税については、党の枠組みで真っ向から対立しているわけではない。例えば、2021年10月には自民党で当時政調会長であった高市早苗衆議院議員も「私案だが、現預金に課税するかわりに、賃金を上げたらその分を免除する方法もある」として、企業の現預金に対して何らかの税を課すことを検討していた。

増税議論が次々と登場(提供:ゲッティイメージズ)

 そもそも資本金が1億円を超える「特定同族会社」については、既に内部留保に対する課税が行われている。具体的には、創業家の資産管理会社やプライベートカンパニーのように税金対策目的で設立される会社が多い。日本でも租税回避的な内部留保の積み上げについては課税するという措置をとっており、この点で異論はあまり出てこない。

 ただし、一般企業の内部留保はどちらかといえば将来のための積立という側面がある。株主が細分化している大企業においては、誰かの税金を安くする目的で貯め込まれている性質のものではない。仮に画一的な内部留保課税が行われてしまえば、企業の体力が大きく削がれ、コロナ禍のような緊急事態の発生時に大規模なリストラなども発生しかねない。

 今回は、「内部留保」の意義と、内部留保課税が全企業に適用される米国の事例から内部留保課税導入のメリット・デメリットについて検討していきたい。

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