日銀の異次元緩和政策が、2012年末から今年で10年を迎える。
そんな日銀も、コロナ禍やウクライナ危機に伴うインフレの余波を受け、ついに“曲がり角”に来ているようだ。金利市場は日銀の利上げをやや織り込みはじめている。
住宅ローンをはじめとしたさまざまな「金利」のベースラインが上がるイベントである「利上げ」。これが日本で実現する日がくれば、主に住宅ローンを組んでいる国民にとって大きな痛手となり得る。
視点を世界に移してみると、米国だけでなくEUや英国も、金融緩和からの利上げ移行が確実視されている。
米国を例に挙げると、同国の物価上昇率は前年同月比7.9%と、政策金利の0.25%よりも高い数値を出していることが、急速な利上げを肯定する要因となっている。典型的な金融政策のあり方からすれば、物価が上がっているときには政策金利も引き上げていくものである。しかし、今はコロナ禍とウクライナ危機による原油高によって、金融政策の意思決定スピードを遥かに上回るレベルでインフレが急進しているのだ。
日本時間17日未明発表されたFOMC(連邦公開市場委員会)によれば、米国の政策金利が0.25%利上げされると同時に、中長期的な政策金利のターゲットを2%程度と置いたことが分かった。この結果は、ある程度予測が立っていたものとなる。例えば、公表直前の米国の10年債利回り、いわゆる「長期金利」をみると、その利回りは2.1-2.2%となっており、市場は公表に先んじて金利上昇を織り込んでいたというわけだ。
利上げ局面においては、実際の利上げに先立って長期金利が上昇していく性質があるということだ。
さて、視点を日本に戻してみよう。日本の長期金利は15日の時点で0.186%と、マイナス金利が導入された16年以来の最高値を更新した。
長らくマイナス、ないしはゼロ金利といわれてきた日本の政策金利も、長期金利市場の反応をみると、ついにプラス圏となりそうな点に注目である。18日に発表される日本の消費者物価指数は前年同期比で0.9%となる予想が出ており、日本においても米国同様、インフレ率と政策金利に開きが生まれ始めている。
日本国債の3年物や5年物といった、日銀の指値オペ対象外となっている短期の国債も、今年に入ってから利回りがプラスになる場面も増えてきている。日本にもコスト要因による物価上昇の影響がじわりと金利市場から浮き上がってきているのだ。仮にこのまま日銀がインフレ抑制のために「テーパリングの実施」や「利上げ」といった策に出た場合は特に、変動金利で住宅ローンを組んでいる国民に深刻な影響が及ぶ可能性がある。
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