日本にも“金利上昇”到来で、住宅ローン契約者の4人に1人が破たん予備軍に?古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/2 ページ)

» 2022年03月18日 07時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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住宅ローンに忍び寄る危険

 住宅ローンには“危険な組み方”がある。その典型的な例が、「固定金利だと借りられない金額を、変動金利で借りられるから借りられるだけ借りる」といったものだ。理想の家のランクがあるとき、固定金利ではランクを下げないと家が買えないが、変動金利では理想の家でもギリギリ返済できるという“甘言”を跳ね除けることができる者はそういないだろう。

 しかし、変動金利は金利が上昇すると、場合によっては固定金利よりも高い金利を支払わなければならないパターンに陥ることもある。そうすると、ゼロ以下という異例の金利が継続している今の状況が永久に続くと想定して、変動金利でギリギリまで借入を行うことは、リスクに対して無防備であるともいえる。

 金利が上がってしまうと、そこから固定金利に乗り換えようとしても今よりさらに高い金利で固定されてしまう。したがって、住宅ローンなどの長期借入の返済方法を検討するうえでは、日本の物価上昇率や長期金利の推移などを注意深く見守り、市場の趨勢を把握していくことも求められてくるだろう。

 変動金利のローン商品は、金利の見直しが半年ごとであるため、足元では目立った変化こそ生じていない。しかし、次回の見直しで変動金利で組んだローンの金利負担が増えてくる可能性は高い。確かに、住宅ローンには5年ルールという、「毎月の返済額が5年毎にしか見直されない」というルールがあり、金利が上がってもしばらくは支払額は一定であるため、直ちに家計の負担を圧迫するとはいえない。

 しかし、金利が上がっても返済額が一定ということは、借入元本の返済ペースがスローダウンし、支払い総額を高めてしまうことにもなる。金利上昇局面においては変動金利のデメリットが表面化する。不動産会社としては、現状、変動金利であれば固定金利よりも高額な物件を購入してもらえる。そのため、業者としては目先の営業成果が最大化する変動金利を推奨しているのかもしれない。

 住宅金融支援機構によれば、21年10月時点において「変動金利」を選択した顧客は67.4%と全体の3分の2以上にものぼる。それだけでなく、変動型の融資を選択した顧客の物件価格に対する融資の割合は、90%から100%の利用割合が最も高い35%となっている。

 この結果からすれば、日本の住宅ローン契約者のうちおよそ4人に1人は「固定金利だと借りられない金額を、変動金利では借りられるから借りられるだけ借りる」という金利上昇局面に非常に弱いローン構成になっていると考えられる。日銀が安易に利上げなどのアナウンスができないのも、金利上昇によって住宅ローンの返済が滞る国民が相当数現れてくる負の側面を懸念しているからかもしれない。

 不動産を取り扱う企業では、顧客による満額での借入意向に対しては、大局的な観点で冷静に説明する責任が求められてくるだろう。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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