グローバル経済の広がりは経済制裁のあり方にも大きな変化をもたらしたようだ。
これまで「経済制裁」といえば、「国際社会」対「政府」という、公的な措置のイメージが強かった。しかし、一企業が国に匹敵するほどの力を持つようになった現代では「企業」対「政府」という意味でも十分に効果のある制裁を加えることが可能になっている。
いま、ロシアは世界各国の有力企業から相次いで”制裁”をくらっている。
ロシア政府にとっては、政治的な側面の強い制裁の方が苦しいという立場だろう。しかし、ロシアの国民にとっては、これまで当然のように享受できていた民間のサービスが利用できなくなる方が辛いのではないだろうか。
米国だけでもネットフリックス、ディズニー、Visa、GAFA、マクドナルド、コカコーラ、スターバックスといった、現代の生活とは切っても切り離せない企業群がロシア離れを表明している。
軍事転用の観点からいえば、インテルやトヨタ自動車をはじめとした自動車各社がロシア離れを表明するのは合理的に思える。また、SWIFT除外の煽(あお)りを受けて、根源的にサービスの提供が難しいクレジットカードのような業態も同様にロシア離れをせざるを得ないだろう。
足元で価格が暴落しているルーブルを稼いでも、業績の足しにならないとみる判断もある。企業の規模が大きくなればなるほど、ロシアとの取引で得られる利益よりも自社のイメージや経営基盤を毀損するリスクが大きいということにもなる。
イメージ毀損リスクについて、日本ではまだあまり実感がないかもしれない。しかし戦禍にほど近い欧州においては、ロシアとの取引を継続する企業は批判の的になっている。現に世論の批判に耐えかねて、ロシアからの取引継続姿勢から一転、全面撤退を決断する企業もでてくるほどになってきた。
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