au通信障害で起きた“負のスパイラル” 「おかけになった番号は現在……」に至るまで本田雅一の時事想々(2/5 ページ)

» 2022年07月03日 18時50分 公開
[本田雅一ITmedia]

トラブルは多摩から全国へ 通信が極端に集中する“輻輳”状態に

 トラブルはまず、東京・多摩にあるKDDIのネットワークセンターで起きた。

 KDDIのネットワークでは、全ての音声通話はデータ通信へと変換される。この技術は「VoLTE」というもので、音声通信の仕組みを「VoLTE交換機」がデータ通信へと変換し、外部の音声通信網と接続したり、KDDIネットワーク内の端末呼び出しなどを行う。

 先日、3Gネットワークが停波されたため、全ての端末はこの仕組みだ。

 “交換機”と表現しているが、実際にはコンピュータであり、“サーバ”と呼ぶ方が多くの人が抱くイメージに合うだろう。ではVoLTE交換機がトラブルを起こしたのかといえばそうではない。

 多摩のネットワークセンターに設置されているルーターを、定期的なシステムメンテの一環として交換したところVoLTE交換機上で異常を示す警告が出た。

 この警告が出た15分後、音声通話要求がVoLTE交換機に届いていないことが判明。即座にシステムの切り戻しを実施したという。切り戻しとは、英語でいうところのフェイルバック。つまり新しい機材へと更新して異常が起きたので、正常に動いてたシステムへと戻すことで対処したわけだ。

VoLTE通信が約15分間、不通に

 時間帯が深夜(午前1時35分頃)だから、実際の音声通話は多くはなかっただろう。しかしVoLTE対応の端末、つまりKDDI携帯電話網につながる全音声端末=最大で約3915万回線は、音声通話を発信しなくとも50分に一度はVoLTE交換機に接続しに行くという。

 多摩のネットワークセンターには東京を中心とした関東地区の通信処理が集まるが、15分後に切り戻すと、それまでエラーとなってたまりきっていたVoLTE交換機への接続リトライ(再要求)が集中して「輻輳」(ふくそう)が始まり、結果的にトラブルが全国へと広がった。

障害対応の時系列

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