会見での「設備の処理能力に余裕はどのぐらいあったのか」との問いに吉村専務は「想定の少なくとも2倍以上、おそらく数倍の負荷があったのではないか」と話したが、一方で次のようにも付け加えている。
「通信の輻輳は10倍の設備を持てばいいというわけではありません。10倍の通信容量があれば、10倍を使い尽くしてしまうのが輻輳です。輻輳の発生を検出し、なるべく早いタイミングで対処する手法を確立させる必要があります」
なぜなら輻輳という現象は、“輻輳による通信しにくい状況”がさらに多くの混雑を生み出す、いわば負のスパイラルを起こすためだ。
近年、ネットワークシステムの管理ではAIによって状況を監視し、自動調整を行う仕組みがさまざまなところで導入されている。KDDI自身も最新の多摩第5ネットワークセンターなどで導入している仕組みだが、輻輳検出に関してはAIによる監視はまだ実現していなかったという。
繰り返しになるが、今回の障害がどのような経緯で発生したものなのか、まだ詳細は明らかではないが、輻輳発生の分析が進めば、障害を未然に防ぐためのシステム開発にも役立つだろう。
KDDIには今回の障害をきっかけに、より強靭なネットワークの構築を願いたい。
今回の障害では、その影響範囲の大きさが可視化された。一般のユーザー端末で緊急通話も含めて発話できなかったことも深刻だが、企業向けネットワークサービスにも影響を与えていた。
物流(ドライバーへの情報伝達や通話)、コネクテッドカー(緊急時、トラブル時の通話サービスなど)、気象(気象観測センサーなど)関連、銀行(ATM)関連、交通関連(空港スタッフの無線機など)で影響が出たという。
大規模障害時、どのように利用者に対して状況を発信するのか。通信手段を失ったときの対処法をどうすべきか。今回の障害発生により、さまざまな課題が浮かび上がったともいえるだろう。
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